・存在の秘密をみつめるまなざし
子どもの表情を描かせたら、この作家の右に出る者はいない。
『金曜日の砂糖ちゃん』
眠る砂糖ちゃんの表情は、観るたびに触れたくなるほど愛しい。
そんな砂糖ちゃんに惹かれて、静かに見守る生き物たち。
なかでもカマキリがご執心というくだりと、描かれるリアルな仕草は、
甘さに流れないこの作家らしい切れが効いて小気味いい。
『草のオルガン』
街はずれにぽっかりできた空き地の、懐かしいたたずまいを思い出す。
そこで男の子が遭遇するオルガンと、集まる蝶にバッタにカラス。
空気の抜けたオルガンのたてる音と彼らのささやきが聴こえそう。
『夜と夜のあいだに』
はっとするような女の子の表情や仕草は、こ惑的ですらある。
夜と夜のあわいに旅立って、もはや帰ってこない。
扉の向こうにひかえる犬たちは何の化身か。
どれも読み返すごとに余韻を残す。
本の装丁も見事。
・「不思議」を超越した甘美。
老若男女問わず、それぞれに深く感じさせる何かを内在した、とても強い世界観と、ガラスのように儚い描写が共存した、素敵な絵本。3つのお話が入っています。
暴論なら「不思議・シュール系」にカテゴライズされてしまうのでしょうが、それだけでは魅力の多くを見落としてしまうでしょう。
思わず手に取ってしまう仄明るく魅力的な表紙、読み始めればしばしば現れる断絶的な黒によるメリハリと、飽きさせません。
どこか往年の「みんなのうた」が有していた世界観のようでもありますね。
心地よく迷い込めるようなおとぎ話にしばらくひたってみたい方、うってつけの一作だと思います。
・リアルな記憶なのか幻想なのか・・・
三つのお話で構成されていますが、最後のフレーズに捕らわれて購入してしまいました。
心の奥深くに眠っている幼児期の記憶や感覚を呼び覚まされる絵だと思いました。リアルな記憶なのか幻想なのか・・・。
それっきりもどっては来ない。と、言うことはもう二度とこの世界には戻れないと言うことでしょうか?
・誘惑する黒
不思議なタイトルですね。
金曜日という言葉は特別な響きを感じる。
一週間の中では、onとoffの切り替わりを伝える鐘の音的な曜日だ。
それに続くのは砂糖ちゃんという甘い誘い。
眼を閉じた少女の絵とあわせて、読む前から色々と想像が膨らみました。
これから読まれる方、心してページをめくってください。
いつの間にか、幼い頃の無意識の世界へと足を踏み入れ、
眼を開けたまま、夢をみることになるからです。
ボクは酒井さんの使う黒が好きです。
世の中の喧噪を全て塗りつぶし静かな時を作り出してくれる。
そして、その中でしか聞こえない小さく美しい音に、気付かせてくれるから。
表題作を含め3編の構成になっているのも、ちょうどいいですね。
これ以上続いたら、本の世界からもどって来れなくなるかもしれない…
これは、大人にとっては罪な絵本です。
・きれいです
最後の物語は一見、単に最後に余韻を残しているような気がします。
それだけでも、なんだか素敵ですね。
でも、これは籠の中の小鳥の行動、もしくは小鳥の気持ちを、あの可愛らしい女の子で表現されているなのではないでしょうか?
最初は絵に惹きつけられたのですが、ストーリーにも、とても感動しました。
この絵本は、たくさんの方に鑑賞してほしいです。