Amazonカスタマーのレビュー
・正義(美女)と悪(醜女)
この作品は後半から主人公でありたぐいまれなる美貌と清い心を持つ女と、悪役でありそれだけで周囲から蔑視される容姿と陰のある性格を持つ女という対照的な二人の、一人の男をめぐる戦いのようになってしまっている。それが外見美=性格の良し悪しの様に感じられたため自分は後半やや興ざめしてしまった。
しかしこの対立構造がラスト数ページでかなりよく生きてくる。結局勝ったのはどちらだったのか、登場人物のうち一人が見せた自己犠牲精神に意味はあったのか、そして何より本当の地獄が始まるのはこれからではないのだろうか…
・途中から結末は予測できるが
阪神淡路大震災の痛手から立ち直ろうとする地域を舞台に、人の情動が読めるエンパスの女性が、被害者の心のケアに活躍します。そしてそこで逢った13の多重人格を持つ少女との関わったことから、物語は始まっていきます。
漢字の意味を多重人格のキャラクターにこじつけるのは、やや荒唐無稽に過ぎますが、それはそれでおもしろいと思います。おもしろく読み進めるためには、こんな乱暴さもときには必要なのでしょう。
体外離脱可能な人格を消去するには・・・ 結末はちょっと予想できてしまいますが、それでも十分読者をわくわくさせてくれます。
・多重人格
作者初期の作品であり、まだ、洗練されてない感があります
ちょっと、ご都合がよろしいかと。
最後のところは、不気味で寒気がしますね
・貴志ホラーとしては微弱な刺激。
「天子の囀り」「黒い家」など強い刺激に慣らされてしまうと、
こちらの作品はホラー色は弱めに思うかもしれません。
とはいえ、ドラマチックに盛り上げる構成力や、
著者お得意の学術的な表現は健在。
この作品では心理学をメインに知的要素が多く含まれていて、
稀有なエンターテイメント作品に仕上がっていると思います。
(もちろん貴志作品全般に言えることですが。)
あとは個人的な好みとなってしまいますが、後半にオカルト要素が
強くなってしまったため、リアリズムが減少してしまったように感じます。
私としては、その点で少し冷めてしまったのがマイナスですね〜。
元々主人公がサイキックという内容も現実離れしているので、
それも好き嫌いが分かれるかとは思いますが・・・
でも、最後まで読ませてくれますよ!
・精神について
自分は心理学について詳しくないのですが、
それでも分かりやすく心理学についての記述があり、好感がもてます。
実際に今可能な事象とは異なる物も展開上ありますが、
ホントに出来るかの様な錯覚を受けるような説得力で、面白いです。
長いものの割と簡素な文体で丁寧に書かれているので、
気持ちよく読み終えられます。