・真のヒロインって実は妹?
当初事前チェックでは感動もの? 的な売りを信じすぎたことが最後まで尾を引く結果になってしまいましたが…。
ストーリとしては愛するものを守る為少年が犯罪に手を染めていく話なのですが、中盤までは主人公とともにハラハラしたり一緒に怒ったり一体となってサクサク読んでいけましたが、終盤に向けてからは主人公が一体となった自分の心から離れていき、読むこと自体が苦行と錯覚するぐらいきつかった…。
結論として どうしてこうなったか考えさせられる、後悔という負の感情で読者の心をかき乱す、読んだ後半日は作中の余韻が抜けない など本を娯楽として考えるなら殺人者をここまでリアルに表現し、緊張や苦しみを伝えきった本は凄いです。
残念でならないのは妹のシナリオをもっと増やして欲しかった…。この作品で一番主人公の大儀の中心にいるはずの人物であり、最後登場人物の中で一番苦しみ続ける人だから…
・防げた筈の悲劇
主人公について傲慢で未熟と声が上がっています。
犯行に至るまでの心の動きも、やはり短絡的です。
未熟ゆえにケアレスミスを連発し、追いつめられた末のあのラストですし。
私もそう思いますが、そもそも母が曾根に対し毅然とした態度を取ってさえいれば
こんなことにはならなかったのでは。
DVの後遺症で、脅されたらうまく頭が働かなくなったのかもしれません。
でも、「子供のことで脅され耐える私」の姿に酔っているように見えるのです。
その脅迫内容すら、いつか子供が自分で乗り越えなくてはいけない内容。
子供の為と思って耐えているようですが、母が傷つけられる姿を見ても子供は傷つきます。
真の悲劇の原因は、この母親なのではないでしょうか……
・櫛森落ち着け
主人公、母、妹の円満だった家庭に、母の別れた再婚相手である、ヘビー級の体躯を誇る屑(主人公に言わせるならば)が居候を始める。
そして、屑により家庭の平穏は乱され、主人公は証拠を残さずにこの暴君を葬り去る計画を立てる・・。
まだ夜が明けない時間帯に読み終えたわけだが、明らかなミスであったろう。
このやりきれなさ、虚脱感・・凹むねこれは。
厚みのある読ませる文章は本作でも健在で、物語の中盤以降は主人公を取り巻く状況が変化を見せるが、彼の心理描写が秀逸。
また、殺害方法についての細微にわたる丁寧な説明は、まさに貴志氏と言ったところか。
終始退屈せずに読めたが、殺害方法が巧妙で、高校生離れした卓越した才知の持ち主である主人公にリアリティを感じず、また一方で、簡単に殺害に走ってしまう早計さには、いささか呆れてしまった。他に方法はありそうなものだが・・。
そんなわけで、主人公には完全に肩入れすることはできなかったが、ラストの紀子の台詞に心揺さぶられ、妹は全体的に可愛く、純粋に楽しめたから満足。読後は悄然としちゃったけど満足。
・確かに10代の人に読んで頂きたい
まず、自分は10代の少年ではありませんが
読んでいて、そして読み終えて
ちょっと涙腺が緩んでしまいました、、、
最初に平穏な家族(母と妹)を脅かす母の元旦那を
殺人という短絡的な考え方で、想像で満足せず
しかも完全犯罪を企み、実行してしまうトコロなど
ちょっとムリあるだろ!と思うかも知れませんが、、、
確かに、客観的に見ると、動機があまりに陳腐。
他にも方法はあるだろ、、、とツッコミが入ると思うかも知れませんが
人間は本当にトラブルに直面した時、真に悩んでいる事柄であればあるほど
人にはなかなか打ち明けられないものでしょうね。
作中では勇気を振り絞り弁護士に相談するも、それが解決に導かないと分かれば
なおさら短絡的な解決方法が脳裏に浮かび、遂に実行を決意する、、、
そして完璧に計画していた犯罪が破綻した時、主人公の心は
もう正常な思考ではなくなっていき、、、、
読んでいて思ったのは、この主人公には正義などなにもありません、、、
あるのは常に自己中心的な考え方と他者を見下し、外見は笑っていても
心の中ではバカにしている傲慢さが読んでて伝わってきました。
作中ではしきりに母と、妹の為だ、、、と自答するが
常にあるのは己の保身。人を殺してもクズなら許される。
そして、同級生に普通に接していても、心の中で見下している
傲慢さ、、、
この主人公こそ10代の孤独な少年にある心の闇だと思いました。
誰にでもある少年の心ではなく、孤独な少年にある特有の闇なのかなと解釈しました。
学校では成績優秀、他者に何の関心も示さず、点数と自己の能力向上に努める
成績優秀者。
きっと、社会に出たら出世しか目に入らず、他人を蹴落とすのに忙しい日々に
給料明細の数字を増やす事が己の価値を上げると言うような大人になっていたでしょう、、、
彼女と出会っていなければ、、、、、
本作で涙がでるのは、彼女の存在が余りにも大きいからです。
おそらく、紀子がいなかったらこの作品の評価は大いに変わっていたでしょう。
彼女の恋心があったからこそ、序盤では他者に無関心で傲慢な主人公も
後半では所々変わってきた心情が伝わってきます。
今は社会人となり毎日仕事で忙殺されてるような10代の頃、誰しも経験したような淡い思いを
忘れてしまった大人にも是非読んでほしいトコロでもあります。
やがて主人公の犯した罪と彼女の恋心が事件と知らず知らずに
リンクしていき、そして結末には、、、、、
泣けます。本当に、、、
単純に完全犯罪を目論んだって最後は捕まるんだろ、、、と予想して読んでる人は
言い意味で裏切られると思います。
少年の心をいつまでも忘れない大人にもオススメしたいです。
・設定が甘い
小説の出来としてレベルは高いかもしれないが、主人公の性格・心理・言動の面で、幾つも浅はかさを感じた。
決して、著者の落ち度と言うわけではない。むしろこれは著者の意図通りなのかもしれない。
おそらく、周囲やメディアの評価が的外れだったのだろう。
主人公は恐ろしく短絡的・身勝手な犯行をし、自己陶酔的な部分を感じる。
まあそれが若さだといわれれば、仕方が無いが。
「殺人」という一線を乗り越えるわりに、主人公の心の葛藤が軽薄な気がした。
家族の為を考えるからこそ、殺人という手段は選ばないはずではないのか?
結局は、自分自身の苦しみを終わらせたに過ぎない。
最後の自殺も、自身の都合で他者を巻き込んでいる。その点についての呵責も描写もない。
事故を起こさせられた、車の運転手やその家族の事など微塵も考えていない。
目先の事ばかりに囚われた、主観的で身勝手な行動が終始続いていると思う。
また、同級生や周囲に対する見方が冷淡である。
よほど自分に自身があるのか、傲慢さすら感じなくも無い。
少年犯罪を批判していた主人公が、自ら犯罪を犯す、というのも矛盾している。
読む価値はあるかもしれないが、おススメとはいえない。
この犯罪を美化する人々に、嫌気が差してしまう。