・感情移入してしまう
全体を通して面白いですが、特にエーブが商人の道を歩んでいく話が面白い。
本編ではエーブは狡猾、貪欲、大胆といった男前な印象を受けますが、
こちらのお話ではエーブがまだ貴族の生活から抜けきっていなく、
商いという慣れない場でアタフタする場面にはかわいらしささえ感じます。
まだ人を信じる、という事に疑いがなかった頃。
そんな彼女がどうして今のように人を騙し、裏切り、ひたすらに利益のみを追求すること
となったのか。商人という人間が如何にずる賢いか。
そしてその商人達の世界に入った彼女がどうなったのか。
そういった、エーブ=ボランという人間が誕生する少し暗いお話です。
対して、ロレンスとホロの短編は甘いです。相変わらず、二人の言葉遊びやらは読んでいて
楽しいですね。
・今までのもやもやが払拭される1冊
前半は劇甘2本に雰囲気を飲まれ、後半1本は勉強になる作品です。ヒロインの思考がそれぞれのシーンで丁寧に表現されているので、なるほどなーと思ってしまうのです。今までの作品の中の隙間や過去を埋めるのに丁度いい長さの、暗黙の了解と省かれていたキャラの思考が理解できるようになる1冊です。この1冊を読んだ後に今までの話を振り返ると感想も変わってくるかもしれませんね。
・サイドストーリー集第2弾。エーブの過去が明らかに。
「狼と香辛料」の作者、支倉さんはコンスタントに作品を出してくれて、ファンとしてうれしい限りです.今回はロレンスとホロの旅の日常を描いた短編2本とあの守銭奴、エーブ・ボランの誕生秘話中編です。なんといっても、書き下ろしのエーブ編がおもしろかった。人間の醜さ、金が絡むと人間は平気で人を裏切る。読後は人間不信になり落ち込みますが、たくましく変貌してゆくエーブに親近感を覚えます.
・狩られる側から狩る側へ
今でこそ凄腕の商人であるエーブの修業時代のお話です。
このころは、元貴族ということもあり、世間知らずで、すぐに人を信じてしまうといったように、甘さが抜けないでいたが、とある商売での失敗をきっかけに、羊から狼へと変わっていくエーブの姿が描かれています。
ホロとロレンスの短編のほうも相変わらず、他愛のない会話のやりとりが心地よく、
毎回の如く謎かけや、考えさせられる部分があるので、この巻も一気に読み切りました。
オススメです^^
・エーブ・ボランの話
ボランが一つの甘さを克服して、覇道へ一歩踏み出した話ですね。
没落前の話からかと思ってましたが、没落後の話でした。
まだ甘さがあり、他人の善意を信じていたエーブが初々しいです。
この手の話では
『浮かれる = 痛い目に遭うフラグ』
『皮算用 = 失敗するフラグ』
『信じる = 裏切られるフラグ』
なので、3拍子揃ったエーブが酷い目に遭うのは、
ほとんど全ての読者が予想したんじゃないでしょうか?
それにしても、こうしてみると、エーブとロレンスって失敗パターンがそっくり……
エーブはロレンスを気にかけていたようですが、
彼女から見れば、自分がかつて捨て去った甘さをどこか残したまま、
商人として見事に独り(?)立ちしているロレンスが眩しかったのかもしれません。
非情となる事でしか一人前になる道を見出せなかった彼女からすれば、
彼のありかたというのは、自分が見つけられなかった、しかしできればそうありたかった、別の可能性だったのかもしれませんね。