Amazonカスタマーのレビュー
・小説の難解さに比較して読みやすいエッセイ
小説家、平野啓一郎の20代に書いたエッセイをまとめたもの。同時に刊行された『ダイアローグ』は対談集。
冒頭の三島由紀夫の金閣寺を論じたものはエッセイというよりは文芸評論で、かなりの分量のものだが、その他は短めの解説や感想などである。
また、自作の小説の解題もあり、今まで読んだ『葬送』などについて、著者自身の声が聞けて、彼の小説を愛好する者の一人として、嬉しかった。
もちろん、著者自身の著作に対する思いと読者である私の感想とでは隔たりがあるが、その隔たりに違和感を覚えるというより、彼が何を考えて、それらの小説を執筆したかを知ることで、むしろ、そのギャップを噛みしめながら、彼の小説をより一層楽しめるような気がする。
小説の難渋な文体と比較して、エッセイ自体は読みやすい。硬軟使い分けることのできる彼の文章力のすごさを感じた。
・二十代でのエッセイないし論文集
小説家・平野啓一郎氏の、二十代でのエッセイや論文、自作解題を含んだ一冊。
同時刊行の『ディアローグ』もそうですが、私は文芸誌で氏の書いたものや対談は大まかに読んできたので、このエッセイ集でも見たことのある文章が散乱していましたが、やはり個人的にも一番印象が深く、氏にとっても最も熱のこもっているであろうものが、初っ端の『金閣寺論』です。私はただの『金閣寺』一読者でしかなかったのですが、一年前位にこの論文を文芸誌で拝読した時に、「こういう読み方があるんだ!」と驚いたことが、懐かしく思い返されました。平野氏の三島に対するパッションがそのまま感ぜられます。その他、新聞掲載用などの短いものが多いですが、それでも核心の付いた文学に関するエッセイが「1 作家論 評論」を埋め尽くします。『ボルヘスと現在』なんかは凄く良かったな。
「3 自作解題」では、デビュー作『日蝕』から、最新短編集『あなたが、いなかった、あなた』までを解題していきます。『贅言ー「日蝕」の為にー』の最後で、「私の願いと云えば、ただ、作品の背後に作者の影を探ろうとするような、卑しい読み方は避けて欲しいと云う事だけである。」と書かれていますが、申し訳ないですが、私はそんな「卑しい」読み方をする読者です。やはり小説というのは、自己表出の手段であり、その中に作者の心理が表出されていないことなど有り得ない、と思うからです。もしそうでなければ、私は小説など読みません。読んでいって、隠された作者の心理とシンクロし、「わかる、わかる」とシンクロするところに、一つのカタルシスを感じるのです。実際、氏の作品中に、氏の影は多分に見つけられてしまいますし。だから、ここで近代がどうとかネット社会が云々だとかということを氏が詳細に解説されていますが、それよりも純粋に作品ありきで私は善し悪しを判断します。とは言いつつ、色々と氏の考えを汲むのは面白いです。
「2 建築、演劇、音楽、美術」は、正直まだ私は読めていません 苦笑。なのに何故このレビューを颯爽と書いたかというと、本書を読んで感じた、氏の「書きたい!」という情熱に触発されたからです。二十代でこういった文学修業を経、氏はまさに今、勝負の段階に差し掛かっていると思いますが、素直に応援したいです。私も何某かのジャンルで、氏に負けないように、二十代を精一杯疾走したいです。
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