Amazonカスタマーのレビュー
・平野啓一郎の対談集。
二冊同時刊行のひとつである対談集(もう一つはエッセイ集)。
早熟な人間の、成熟していく過程を、話しコトバがもつ独特の開放感とともに堪能できる一冊となっている。やはり文学者だなと思うのは、対談する相手が文学者のほうが面白く、「言いたいこと」にブレがないことが確認できる部分だろうか。
あとがきにもあるように、大江健三郎との長い対談がもっともエキサイティングである。若くして作家になった人物特有の不安要素が極端に少ない両者だけに、内容も硬質で、視線は常に先にあることを感じさせる。
ただ、デビュー自体がセンセーショナル(古い)であっただけで、その後、彼を追いかけるのは本当に文学好きな人間に留まっている、と考えられる。初期の作品ほど、おおきく取り上げられることも、ないように。その理由も、もしかしたら本書にあるかもしれない。
・二十代における対談集
作家平野啓一郎氏の二十代における対談集。日野啓三、古井由吉、島田雅彦、瀬戸内寂聴、高橋源一郎、大江健三郎、などの大御所合計十一もの豪華対談が収録。
総て年長者に対し、年齢の割に博識な知性で対応する平野氏の二十代の修業期間が垣間見れます。それぞれの対談においてその人の人柄が分かるようです。
中でも印象的だったのは、日野氏と瀬戸内氏と高橋氏と大江氏との対談でしょうか。
日野氏は新人作家に対し優しき真摯に対応し、将来への期待のエールを送っているようにすら感ぜられます。瀬戸内氏も女性特有の抱擁するような余裕で『高瀬川』におけるエロスの主題などについて対話します。高橋氏の対談が最も印象的で、平野氏の作品、特に『葬送』について、「なぜあれだけ見事に「現在」を消したのか」「すごく単純化していうと「コア」が見つからない」「いい小説には「遠くへ来たなあ」という、大きな移動感がある。ところが、あの小説には、そういう移動感はない」などと、厳しい注文をつけます。これはただ新鋭作家を褒めるよりも、極めて勇気の要る行為であり、しかもそれを言われた平野氏には却って為になるのではないでしょうか。ここで付けられた注文(移動感、コアの存在、サブカルチャーの導入など)が、最新作の『決壊』という小説で具体化されているように思います。大江氏との対談では、平野氏も言うとおり二十代の総決算というべき思索が披露されています。
こういった対談を通し、三十代に突入した平野氏は、今後は対談を受ける立場として、大きく成長してゆくのでしょう。
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