・テーマの切り口は実に鮮やかですが・・
伊坂氏らしい、リアリティとファンタジーが絶妙にブレンドされた作品。怖ろしい妻のキャラクターや友人の井坂好太郎の存在など、一部でやり過ぎなのでは・・と思われるほどフィクションっぽい味付けがある一方で、人生や生活におけるインターネットと情報の重要度が際限なく上がっていくという近未来の設定には有無を言わさぬ説得力とリアリティがあった。「人は、分からないことに出会ったら何をする?」という問いに対する回答として、ごく自然に「そりゃ検索だろ」というセリフがあってはっとしたのだけれど、2010年の現在において既にその答えは十分に正しいと思う。日常生活でふと湧き起こる様々な疑問について、かつて−ほんの15年前には解決する手段はほとんど皆無だった。情報はいつでも断片的にしか存在せず、何か疑問があったからといってそもそも「誰に聞けば良いのか」ということからしてまったく分からないというのが実情だった。確定申告の方法や魚の捌き方、好きなタレントの近況、捺印と押印の違いなど、日常ふと浮かんでくる疑問で、ネットを検索してまったく答えがないことはほとんどないと言っても過言ではない。本作において伊坂氏の視点が秀逸なのは、検索という行為を逆の側から見た場合、入力されたキーワードによって入力した人間の情報を吸い上げることが可能だという部分に踏み込んだ点にあると思う。googleという世界企業の利益の根幹ともなっているこの極めてシンプルな事実は、インターネットによって世界が変わる中で計り知れないほど重要な意味をもっていると思う。その人間が何に興味をもっていて、その分野においてどの程度の知識をもっているのか・・。この情報は、時として住所や電話番号といった単純な個人情報よりも重要な意味をもつ。本作が鋭く指摘したように、検索を通じて政府が危険分子をあぶりだすという図式は、それが実行可能と思えるだけに不気味であるし預言的ですらあると言える。とここまで褒めておいて評価が3.5点なのは、本作が社会学的に重要なテーマに踏み込んだ秀作になり得た反作用として、エンターテイメント小説としての要素が多分に犠牲になった感があることに起因する。例えば「妻」のキャラクターは最初からある秘密の存在を示唆していたが、最後までその秘密的部分への種明かしはなく、「ん?なんだったんだ、一体。」というすっきりしない感覚があった。本作は「魔王」の(かなり時をおいた)続編であり、いったんは魔的な天才の支配する社会を描こうとした伊坂氏が、この複雑極まりない社会を一人の人間が制御するという設定に限界とウソ臭さを感じ、より現実的な魔王(コンピュータシステムそのもの)に主役を移した作品だと思っている。ひょっとするとまた20〜30年経った後の世界を舞台にした続編が生まれてくるかもしれない。そしたらまた読みたい。
・変化する井坂さん。本気をだしてよ井坂さん
作風が変化するのはアーティストとして素晴らしいと思うけど、読み手としては失望しました。なんだか売れっ子になるとワールドワイドな展開になるのは何故だろうかと思います。
でかい話でもゴールデンスランバーの方は それでもいい作品だったと思う
。進化した井坂さんすごいと思って熱中できた。モダンタイムスは超能力 とか出てくるし長くてぐだぐだ。なんというか長い話のわりに中身がない感じがしました。
重力ピエロみたいな話しても話しても話し足りないような感じは無く。ネタ切れに近いようなぐだぐだ感。浦沢直樹のモンスター読んで感動した後の20世紀少年。という感じがしました。
あと作品がどこか映画を意識した作りっぽかった
、、、ような気がしました。僕がひねくれてるせいでしょうか。
今の井坂さんは本だせば売れちゃう人だから仕方ない。井坂さんは本気を出せはすごい作家。頑張って井坂さん
・されど歯車
魔王の続編。といっても,時代はとても隔たっている。
ゴールデンスランバーと同時に書いていたわりには,こちらの方がまとまりはあるかも。
「播磨崎中学事件」のところはさすがに辛いが,それ以外は読める。
基本的に,どんな人もすべて歯車であるのだけれど,目の前の具体的な問題に対処することが,この時代に生まれてきた我々の,最大限できることかも。
・期待ハズレ
この作品は期待ハズレでした。
確かにあちこちに伊坂さんらしさはかいま見れるんですが、つまらないエピソードを詰め込みすぎて不必要に長いというか、全体的に消化不良という感じが強いです。
最後の展開もあまりにご都合主義的でシラけましたし、主人公の妻の異常な残虐性は読後の後味をかなり悪くしていると思います。
過去の名作を星五つとするなら、この作品は星一つの評価が妥当です。
・軽快さに欠ける
「そういうことになっている」そんな社会のシステムに立ち向かおうとした人々の物語。
ゴールデンスランバーと同じく、敵はなにか巨大な陰謀。といういわば、犯人のいないミステリー。
そしてこれまた未解決のまま終わる。かなり実験的な作品。
主人公はお得意の、一見クールだけど実は情に篤い夫と、その主人公を尻に敷く強気な妻。
なんだかパターン化してきているような印象。
おそらく今までは本一冊(もしくはその中の一章)を読み終わった時点で最高の満足度が得られるように書いていたのを、
今回は、連載した56回すべてで見せ場を作ろうとして書いたのでしょうか。
文にいつもの軽快さがない。読みづらく、重い。
一気に読もうとすると疲れる。
そして国家、政治に対する価値観が全面に出ている。
ゴールデンスランバーの方が小説よりか。今回は主張をかなり織り込んでいる。
これも伊坂さんにしては珍しい。
そして物語自体も、長い割になんだか目新しさがない。
ただ、P361からの井坂好太郎の小説観には感動した。
P213の井坂好太郎の小説の特徴もなかなか面白いと思う。
著者の考えは伝わってきた。重いテーマを面白くしようとしているのもわかる。
ただ私は今までの、エンターテイメントにちょっとだけ主張を織り込む、そんな作品の方が好きだ。