・まさに今、必要な本
うちの会社もManagement by objectivesを採用してるけど、肝心かなめの上司と部下の納得がないまま、形骸化していて、単なる成果評価の道具と化してる.
目標管理の制度導入したときは、確かこの本に書かれていたことを実現するんだ…というはずだったんだけど…
経営者・管理者・その下で働く現在の人々にとっては一読すべき内容かとおもいます.
・レベルの高いマネジメント論
偶然だとは思うが、東洋経済2008年9月6日の押井守監督のインタビューと内容が重なると感じた。
つまり、押井監督は、「僕は絵を描かない、書けない監督です」、従って、「他人のアイデアに頼る」。
それは、「多くのスタッフの感性が加算されるからこそ、映画はおもしろくなる」、逆に言えば「自分一人で考えたら、自分のアイデアの範囲でしか作品は成立しない」から。
「スタッフも「自分が必要とされている」と思ってくれているからこそ、こちらが期待した以上の仕事をしてくれるのだと思う」と語っている。
この考え方は、実は本書のコンセプトと概ね重なる。
日本のクリエィティブの雄の押井監督が語ることと、北欧の企業の仕事の仕方とがコンセプトが似ているというのは、北欧企業がクリエィティブな製品やサービスを生み出していることと何か関係があるのではないだろうか。
本書では、まず、日本の成果主義、業績連動給与がうまくいかなかった背景に、そもそも日本の労働者が何を求めているかに読み違いがあったとしている。
タワーズペリン社のエンゲージメント(従業員が仕事に対して自発的・主体的に努力する意思・能力)・ドライバー(要因)を見ると、「意思決定への参画」、「経営者が長期的な成果のために行動」、「スキルや能力の向上」が上位で、給与に関する項目は上位に来ていない。つまり、自発的な努力は、給与によって誘発されないことを示している。
むしろ、リテンション・ドライバー(優秀な人材を引き留める要素)で、給与に関する項目が日本では上位に来ると指摘している。
つまり、「目の前にご褒美がぶらさげられれば、誰でもかんばるはず」という前提が間違っていたということだ。
じゃあ、どうすればいいのかということだが、まずは、北欧系企業のエグゼクティブの行動規範が挙げられているがこれがおもしろい。
1)専門特化した技術を武器に世界市場へ乗り出せ、2)相手の文化に溶け込む謙虚な姿勢で取引を行え、3)上下関係が希薄なフラットな組織で委任型リーダーシップを取れ、4)略
また、日本人の「甘え」について土居健郎の引用として述べられているが、要は、浪花節というのは、組織への我慢や忍耐との引き換えに得られた「甘え」だというのもおもしろい。
さて、結論であるが、第6章に書いてある「他者の自己実現の力を借りて、自分の自己実現を図る」(p159)というコンセプトであろう。
逆に言えば、他者の自己実現の力を借りないでは、自分の自己実現なんてできっこないと言うことである。
そのために、社員のエンゲージメント(最近、日経にもこの言葉で紹介されていた)を高めることが重要と言うことだ。
現在の日本社会のマネジメントの改善ポイントとしては、1)一方的に上位下達的に指示をするのはダメ、2)部下のキャリアプランや希望をよく聞く(会社の期待も伝える)、3)マネージャーは管理をする人ではなく、仕事の手助けをする人になる、4)管理職の権限拡大(特に部下の給与額の決定について)、というところが、処方箋ということになるのだろうか?
以上を踏まえると、日本で成功失敗が問題になっている成果主義、業績連動給与の導入云々という議論のレベルに止まっていては、トラック2周遅れということなのだろう。
・どちらかというとエッセイ
「実はやる気がない日本人労働者」というアングルは新鮮だし、興味深いテーマだが、いかんせん踏み込みが甘すぎる。それはなぜなのか、昔は違ったのかといった点がほとんどスルーされていて残念。「とりあえず成果主義のせいだろう」というのであれば、ばりばりの年俸制を採っているヨーロッパ諸国はどうなるの??
まあお爺ちゃんの経験譚として読む分にはそれでも良いが。
・企業内での甘えの構造がよく分かる
「私のマネジメント・バイアウト」のくだりは、著者自身の実体験から語りかけるので、非常に説得力がある。大企業の子会社が、グループ内のビジネスに終始し、いつまでもひとり立ちできないケースが多いのもなるほどとうなずける。最後の「ヴァイキングの教え」も感銘深い。
・成程と思う指摘に満ちている
学生時代、サラリーマン時代からどんなに沢山の人事管理の本を読んだことだろう。退職した今振り返ってみると、それらの本は自己満足のための机上の学術書ですぎないと。数字とかグラフ等の統計を心理学とかで関係づけないと日本人は気が済まない。しかし、この本は読んでいて、全然気取ったところがなく、スーッと理解できて明日からでも現場でやってみようと言う気持ちにさせる。難しい理論展開ではなく、自分がその気になりさえすれば、人事管理はうまく行く。それを筆者が40年以上の実体験で裏付けている。電車の中で手軽に読んで、即実行。ベストセラーになったジャック・ウエルチの人間をサイボーグのような扱いをする“わが経営“よりも、この本の考え方はずっと人間的で、健康的で人生が楽しくなること請け合いである。ベストセラーを読んで安心したいのか、それとも本物を読むべきか。