・プロットが不磨すぎてシステムが異常をきたす
本作を読んで端的に感じてしまう完璧だ。だが同時に完璧すぎてつまらないとも。。
本作に限らず事実そこが岡嶋二人の美意識とも言えるのだが,この一作はより苛烈だ。というのも,作中の誘拐劇を成立させる為にあまりにも
システマティックにプロットを組み上げているので,逆に制御されてしかるべき前提(システム)にひずみをきたしてしまう。
言ってることが判りにくいだろうからいきなり結論になるとミステリ愛読者にはきついものがあるってこと。いかにもミステリ好きの興味を
そそるタイトルだけに手を伸ばしてしまう方も多いだろうが,読後どうだろうか?ミステリがもつ独自の愛嬌,偏執的で偏愛的な余韻を
感じとれる人はあまりいないのではないかと想像する。
この一作では,そんな愉しむべく余裕をこそげ落としてあくまでストイックに構成されている。ただ矛盾するようだがミステリとして駄目な
わけでは全然なくて,謎解きのキー・ワードだってしっかり用意されています。
しかし,どちらかというとノンストップでドキドキできる誘拐ものを読みたいなって方向きでしょう。その点に関しては岡嶋二人は凄い。
誘拐を芸術にまで昇華させている圧倒的な想像力の鬼火が迫ってきますよ。
・岡嶋二人の最高傑作
昭和43年、半導体メーカー社長の息子である生駒慎吾が誘拐された。
のちに慎吾は無事解放されたが、その時の身代金として会社の虎の子の
資金を使ったために、慎吾の父の会社は大手メーカーに吸収されてしまう。
20年後、ある事件をきっかけに亡き父が遺した手記を読んだ慎吾は、過去
の誘拐事件の際に、父を嵌めた人物がいたことを見抜く。そして、慎吾は、
父の会社を吸収したメーカー社長の孫を誘拐する計画を始動させる……。
本作は、志を果たすことができず、無念の死を遂げた父のために仇討ちをする息子の
物語なのですが、そこから連想されるようなべたつく情念とか重苦しい愛憎を慎吾が
吐露することはありません。
思うに慎吾は、自分より遥かに強大な相手に対し、単に危害を加えて復讐すれば
満足なのではなく、あくまでフェアに、そして誰にも頼ることなく独力で自らの計画
を成し遂げたかったのではないでしょうか。
そうした行為が大手会社に屈せざるを得なかった父の
無念を晴らすことになると信じていたのだと思います。
結末で慎吾は、かつて自分を誘拐した犯人と対峙し、互いの罪を告発し合う
のですが、その後で二人の間に流れる空気がえも云われぬ余韻を残します。
さて、最後にミステリ的勘所について一言。
本作最大のキモは、身代金であるダイヤ奪取のハウダニットなのですが、
そのための伏線は、第三章の冒頭、慎吾の職場を描写している場面で、
さりげなく提示されています。お見逃しなきよう。
・引き込まれる
12年のときを隔てた2つの誘拐事件。その犯人と被害者を巧みに配置して物語を構成している。洗練された作品です。
誘拐事件は、犯人にとって、身代金の受け渡しの際に姿をあらわさざるを得ないという難関がある。本書では、犯人の精緻な計画と、刻々と移っていく状況に応じた警察と犯人の駆け引きがスリリングに展開し、引き込まれます。
コンピュータ環境が、この作品が書かれた当時とは相当に変わっていますが、その点はあまり気になりません。また、「こんなに精緻な計画が成り立つかなあ?」という感じは多少しますが、作者の上手な話の展開によって、不自然さを感じさせません。
岡嶋二人さんらしい、「ほんとうに上手だなあ」と感じさせる作品であり、400ページを一気に読ませる魅力的なミステリーです。
・完成度の高いエンターテイメント
コンピューターにより制御された「完全犯罪」を徹底的に描ききった作品。
純粋に面白かったが、ただそれだけという感想。
ただただ、頭脳明晰な犯人が演出する完璧な「誘拐事件」に、
読み手も被害者と一緒に最初から最後まで翻弄され続ける。
読み終えた後はちょっと疲れてしまった。
これでもか、これでもかと次々と出される犯人からの難易度の高い命令、
驚くべき作戦とその手腕は実は結構突っ込みどころ満載。
しかし、細かいことを気にする性格でなければ続きが気になってどんどん読み進められると思う。
・すばらしいスピード感と乗り心地の良さ!
このお話は冒頭がすごいです!
事件が「ぱっ」っと始まったと思ったら、ビュンビュンと物語が“通過”していきます。
否応のない(そして決して不快でない)この引き込み方は本当に見事!!
ついついページをめくってしまうという現象に後から気づきます。高級カーに乗せられて、景色が見えない道路をつれまわされているような感覚ですかね。
時は昭和40年代。
ある中小企業の社長の息子が誘拐されたところから事件が始まります。
誘拐犯は5000万円を金塊に変えることを指定。
その5000万という金額は、社長が会社再生をかけて用意した金額と同額でした。
疑問を持ちつつ社長は息子のために奔走。
あざ笑うような犯人の指示は数度にわたり、ついに金塊は海の底に。
子供は無事に帰ってきますが、その際の社長の台詞
「これでいいんだな? ○○」
はゾクゾクきます!
さて、時代は下って昭和63年。
またしても誘拐事件がおきることになるのです。
関係者はすべて20年前の誘拐にかかわった人たち。
さらに身代金の搬送人に指定されたのは、20年前に誘拐された社長の息子!
事件は20年前をトレースするかのように続きます。
物語の最後は意外とあっさり。
「え?これでおしまい?」と思うようなエピローグです。
ここでタイトルの『99%の…』が思い浮かび、「ああ」と思う人と「ええぇ?」と思う人に分かれるかもしれません。
とってスマートで、軽くて切れ味のよい作品でした。