・私の傲慢なレビューです。
伊坂 幸太郎の作品は常にスタイッリシュで言葉を引用したくなるものが多い。
魔王も作品としては、間違いなくかっこいい。
ただ、他の作品と比べて何かが欠けている。
重力ピエロではバラバラだったシナプスが少しづつ繋がっていき、最終的にすべての脳が活性化される喜びがある。
私の理解力、想像力が足りないのかもしれないが、最後まで、この作品の伏線が伏線のまま放置されている。従い伏線になっていない。
テーマであるファシズムを語る衝動は村上 龍の作品には遠く及ばない。
それはファシズムという歴史を語るには、あまりに伊坂の文章が美しいからかもしれない。
ましてや、政治的論議がメインテーマで無いのであれば、伊坂さん自身のファシズムを書く上での覚悟が足りないと私は思う。それほどにファシズムとは重いテーマだと私は思っている。
メディアの怖さを知りたいのであれば、森 達也の「世界が完全に思考停止する前に」を
ファシズムの熱狂をしりたいのであれば、村上龍の「愛と幻想のファシズム」を
伊坂の良さを味わうのであれば別の作品をお勧めしたい。
・期待が大きかっただけに
解説が斎藤美奈子ということもあり、手に取りました。
台詞のキャッチーさ、格好良さは流石です。
しかし、読了するのが少し辛かった。
途中で失速しました。
何よりも、女性の描写が生理的に、私には受け付けなかった。
それでも好きですけどね、伊坂幸太郎。
初期の作品化から、何か筋が一本通っていて、ぶれていない所が好きです。
エンターテイメントに留まらず、上昇していって欲しい作家です。(エンターテイメントを否定しているわけではありません)
そんな期待も込めて、今回はこの評価で。
・面白かった。一気に読めました。
何も知らず先に「モダンタイムス」を読んでいたので、そのせいもあってか一気に読めました。
順序としては逆なのでしょうが、十分楽しめました。
今の鳩山さんよりも小泉さんを彷彿させる政治家が登場し、超能力を持った小市民がその能力に気付いて自分なりに闘いを挑むところなど、10代の頃に夢中になった筒井康隆や眉村卓を思い出し何となく懐かしいSF小説を読んでいるような気分になりました。
今までの伊坂作品とは少し違っていて、個人的に伊坂ワールドを一つのエンターテイメントと捉えている分には、それも悪くないと思いました。
・匠のワザ
匠だ。匠である。ユーモアと読みやすい文体で体が伊坂ワールドへどんどん吸い込まされていく。話自体は何気ないのだが、作者自身が日頃感じている何かを小説という形で解説しているようだ。確かにそうだと思うことがある。その一例だが同時多発テロ9.11事件が起きたその後だ。テロ撲滅の名のもとに、アメリカはイラクを攻撃。そのイラクは核はないと明言しているのに攻撃し、持っていると明言している北朝鮮には攻撃しない。これはおかしな話だ!テポドンなんて危険すぎるものも実際撃っている。なにかがおかしい。アメリカは勝手に戦争をおこし後始末を色々な国を巻き込みながら突き進んで行く。伊坂は、さりげなくそして痛烈に批判しているではないか?政治は、だれかが、どこかに利益があることによって、だまされ誘導され続けているじゃないのか?('д`)若い力は未来を考え年寄りは老後を考えた政治をするんじゃないのかなどの伊坂語録は、考え深く二度三度読んでも楽しめます。この読み物は、超能力物かなと思わせつつ、作者のユーモアと匠な筆さばき、作者の思想で描かれたさりげない傑作なのです。
追伸、25回の紙折は小話にも使えますm(__)m
・政治と未来
2005年に出た単行本の文庫化。続編に『モダンタイムス』(2008年)があり、合わせて読むべきだろう。
本書は「魔王」と「呼吸」という2本の中篇からなる。非常に政治的な内容で、全体主義への警鐘を鳴らすような作品だ(著者は政治的な意図はないと言うものの)。そこに超能力がからみ、一種の寓話とでもいうべきものに仕上がっている。物語としての魅力も十分だし、いい本であった。
それにしても、初期の作品とくらべると、伊坂氏も随分と読みやすい小説を書くようになったものだ。