・終末のフール オンザヒル ズタウン
10冊目の伊坂幸太郎。何時も通りの伊坂ワールドを楽しめました。
終末のフールのフールだけは直接、本文に出て来なかったと思うんですが。
アッ!これビートルズのフールオンザヒル。読んでて、そう思いました
ひょっとすると最終話の深海のポールはもしや?・・・
と思いましたが、これは大洪水にみまわれて浮かぶ櫓を海に浮かぶ支柱、ポールになぞらえています。
ちょっと苦しい?ですがやや強引にポール(マッカートニー)を持ってきたんでしょうか。
読者にはフールに続く言葉が見えない仕掛けになってるんだと思います。
フールの下は海に隠れてる訳ですから。
肝心の物語の内容は何気ない日常を描いているものが殆どです。
違うのはこの世界が後3年で終わるということ。
その設定、もしくは仕掛け(?)がなくても充分、面白いのですが
その設定があるが故に読者はそれぞれでもう一度生きるということに思いを巡らせます。
誰もが例外なく余命を持って生きている訳です。
明日か、3年後か80年後か。
知らせれているか知らされていないか。
知らされていないから生きられる?
知らされていても恋人を捜す!
・結局、変わらないのだ
あと3年で小惑星が地球に衝突して、みんな死んでしまうという設定。分かったのは5年前。分かった直後は、殺人、自殺、強盗・・・など、治安は乱れたが、最近は落ち着いてきている。そんな設定の中、語られる8編のオムニバス形式の小説。一つ一つの話は、それぞれに接点がある。
結局、死ぬ直前まで、精一杯生きて、そして最後はみっともなく足掻くことしかできない。
・「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」(鋼鉄のウール)
・周りの水位が上がってくるのであれば、この建物が深海に沈むのであれば、その水面よりも一センチでも一ミリでも高い場所に未来を逃がそうと、櫓から手を伸ばし、背伸びをするはずだ。(中略)とにかく未来を、私たちの未来を、一分でも一秒でも長く生かすために、なりふり構わず手を伸ばす。きっとそうだ。(深海のポール)
結局、いつ地球が終わってしまおうとも、何も変わらないのだ。我々の人生においては。
伊坂幸太郎は面白い。
・温かい気持ちになれました
悲しい箇所、辛い箇所も結構あるけれど温かい気持ちになれます。
・全編通してエンディングのようなまったり感
地球滅亡が分かり混乱が去ったあとの様子を描いた作品。
混乱を描くのはありがちだが、これは見たことがない。
そんなわけで構想勝ちだと思う。
物語は不安定な上に気づかれた変な安定がある
日常を淡々と描いたオムニバス形式。
意外にこういう状況で人はこんなものなのかな、と
妙に納得してしまう感があった。
全編通じてバラード調のエンディングテーマが私の頭の中で流れていた。
・無理してまで出すべき作品ではないだろう
初出は『小説すばる』2004年2月号〜2005年11月号、単行本は2006年3月30日リリース。3年後に隕石が地球に衝突して最後の日を迎える、ということが前提になった短編8編からなる。色々な小説手法を実験的に試している感がある最近の伊坂幸太郎の作品の中でも飛び抜けて設定が映画的(あるいはSF的)な作品である。
時間軸をずらしながら並列的に登場人物を動かし、魅力的な会話で作品構成することが得意な作家が、時間軸を意図的に3年後で終了と決定し、終末期に人間はどう行動するのかを描く、というのはある意味、自分の持ち球を全部封じ手にして、利き腕でない方の腕で投げるピッチャーのような状態ではないだろうか。実際、この連作集はそういう結果に終わってしまっているようにぼくには感じられた。つまり、いつもの伊坂作品のノリがないのだ。
題材も『砂漠』の取材で使ったネタを再利用したりと気に入らない部分が多い。伊坂幸太郎唯一の駄作で、無理してまで出すべき作品ではないだろう、と思う。本屋大賞第4位は納得いかない。