・宇宙に目を向け観察した人たちに歴史
上巻は、人類が有史以来宇宙に目を向けてからハッブルの法則の発見まで、宇宙に目を向けてきた人々の歴史を伝えています。
宇宙観測は、直接的に手に触れられない対象を、我慢強い観測と人類の叡智を振り絞ることによって成立していることが良く判ります。
そしてその結果、我々が認識できる宇宙は、太陽系から銀河系、そして外宇宙にまで広がってきました。その間には、人々が常識と思っていたことが覆される連続です。太陽中心説から地動説、宇宙=銀河系から銀河の外にも無数の銀河が存在すること、ニュートンの重力理論からアインシュタインの相対性理論、そして性的な宇宙から動的な宇宙へと様々な側面で構築された理論が常識となり、それが次の理論の障害になる様子が詳細に描かれており、人類は同じことを繰り返しつつ進歩をしてきているさまが良く分かります。
一方で、それは各時代の先駆者たちが「巨人の肩の上に乗っている」という表現にあるように、先人達の功績の上に功績を重ねていく歴史でもありました。
著者のサイモン・シンは、「フェルマーの定理」や「暗号解読」などと同様に、歴史の積み重なりを非常に上手に描き、上記のことを分かり易く我々に伝えていることと登場人物の描き方が秀逸であり、物語として非常に面白いものに仕上がっていると思います。
翻訳者の青木薫さんは、このような物理、数学にまつわる外国書の翻訳では他を寄せ付けないほどの上手さがあると思います。原書を読んだわけではありませんが、面白さを損なうことなく、更に和書として非常に面白い本に仕上げているのではないでしょうか?
非常に面白い本です。理科系の方もそうでない方も一読の価値あり。お薦めです!
・ビッグバン宇宙論の文庫化
ありゃー、サイモン・シンの新刊読み損ねていたんだぁ〜
と思って上下買って帰ったら、
ビッグバン宇宙論の文庫化でした。
皆さん気をつけましょう。
内容自体は前2著に比べると少し落ちる印象で☆4つです。
・壮大な宇宙史
サイモン・シンの3作目はさらにスケールが大きくなって宇宙がテーマです。
神話の世界の宇宙観にはじまり、天動説から地動説、そして天文学の発達からビッグ・バンモデルにいたる道のりが独特のわかりやすい文章で語られている。
神々の世界であったギリシャ時代と現代で星の見え方はたいして変わらないはずなのに、それを見るほうの知識はどんどん変化していったんだなって思った。
今では誰もが銀河系の中の恒星である太陽の周りを回る地球という惑星に自分がいるんだっていうことを知っているけど、その概念ができあがるまでにはガリレオやケプラー、コペルニクスといった古代の学者のひらめきや無数の天文学者の地道な努力があったんだな。
そして今の宇宙を知ることで、宇宙の始まりについてもまた研究するのが人間の探究心ってやつなんだろう。
アインシュタインの相対性理論がどれだけ重要な理論であったか、そして望遠鏡に名をつけられたハッブルがどれだけ偉大な天文学者だったかもわかりました。
宇宙という壮大なテーマを見事にまとめあげた本だった。
・ちょっとした物理の教科書として、文系にもわかりやすい解説。
宇宙を論じる本ですので、当然ながら物理や化学に関する知識をベースに進んでいきます。しかし、そうした基礎知識が乏しい人間でも読み進めることができるように図解があるので、非常に分かりやすいです。
よく本屋にある、「図解xxx」という類の本である細切れの解説よりも、ノンフィクションベースのストーリーで興味をそそられてから説明をしてくれる本書のほうが、わかりやすいのではないかと思います。
上下ともに、このわかりやすさは一貫しています。
・サイモン・シンの力量ふたたび
最新作「代替医療のトリック」が出たばかりのサイモン・シン。その腕前は、「フェルマーの定理」で証明済みです。
で、その新作が届く前に、まだ読んでなかった「宇宙創成」を読みました。
すでにコメントもたくさんありますが、これは2006年、「ビッグバン宇宙論」という書名で出版された単行本の文庫化で、原題もずばり「BIG BANG」。つまり、宇宙創成そのものである「ビッグバン」について真正面から取り組んだ本です。
「ビッグバンもの」はもう世の中にあふれているのに、「何で今ごろ?」というのが第一印象。古くはホーキング博士からたくさんあって、一般の間でも「宇宙って、大昔に爆発してできたんだ」ってことだけは、だいたい浸透しています。
そういう感覚でこの「宇宙創成」を読み進めると、最初は確かに戸惑います。大昔にさかのぼり、名前を聞いたこともないような科学者たちの「宇宙の謎」への奮闘の歴史が続きます。
でも、それぞれのエピソードがものすごく興味深いんです。
例えば、異なる学説どおしの「血みどろ」の戦い。宇宙は「大昔から常にあったのか」、あるいは「ある時点からスタートしたのか」。その根本的な問い掛けは、以前は五分五分。というか「常にあった派」が優勢だったこともあったと。まるで「天動説」と「地動説」の対立のようです。
それぞれの学派の「証拠集めへの格闘」がまたすごい。その証拠で、「ビッグバン説」がはっきり証明されたという事実にも正直驚きました。でんど〜は、ビッグバンと言っても、それはSFのようなもので、「宇宙の始まりは恐らくそういうもんだろう」程度の概念と思い込んでいたのですが、ここまで厳密な実証の過程を経たものであったとは・・・。
さらに、「世界には始まりがあった」という説は、当然にキリスト教の「創世記」を思い起こすということで、猛烈な宗教論争も避けられません。このへん、客観的学問の極地であるはずの「科学」と、スピリチュアルそのものの「宗教」とが正面から対峙している。日本では考えられない議論のあり方にも想い至りました。
ということで、この本はビッグバンそのものというより、それを題材にして「人類の英知への道のり」を解き明かすことに重点を置いたものなんだ、ということが良く分かります。「科学史」をうんと分かりやすく、万人に提供すると同時に、ニュートンやアインシュタインといった誰でも知ってる科学者の光り輝く業績の影に、何十、何百という名も知れぬ科学者たちの「地と汗と涙」が眠っているんだと。
そういう意味で、著者サイモン・シンの力量は、「フェルマーの定理」に続き。今回も充分証明されました。
さらに評判の高い「暗号解読」も読まないといけません。「代替医療のトリック」も早く届かないかな。