・サイモン・シンの力量ふたたび
最新作「代替医療のトリック」が出たばかりのサイモン・シン。その腕前は、「フェルマーの定理」で証明済みです。
で、その新作が届く前に、まだ読んでなかった「宇宙創成」を読みました。
すでにコメントもたくさんありますが、これは2006年、「ビッグバン宇宙論」という書名で出版された単行本の文庫化で、原題もずばり「BIG BANG」。つまり、宇宙創成そのものである「ビッグバン」について真正面から取り組んだ本です。
訳者もコメントしていますが、「ビッグバンもの」はもう世の中にあふれているのに、「何で今ごろ?」というのが第一印象。古くはホーキング博士からたくさんあって、一般の間でも「宇宙って、大昔に爆発してできたんだ」ってことだけは、だいたい浸透しています。
そういう感覚でこの「宇宙創成」を読み進めると、最初は確かに戸惑います。大昔にさかのぼり、名前を聞いたこともないような科学者たちの「宇宙の謎」への奮闘の歴史が続きます。
でも、それぞれのエピソードがものすごく興味深いんです。
例えば、異なる学説どおしの「血みどろ」の戦い。宇宙は「大昔から常にあったのか」、あるいは「ある時点からスタートしたのか」。その根本的な問い掛けは、以前は五分五分。というか「常にあった派」が優勢だったこともあったと。まるで「天動説」と「地動説」の対立のようです。
それぞれの学派の「証拠集めへの格闘」がまたすごい。その証拠で、「ビッグバン説」がはっきり証明されたという事実にも正直驚きました。でんど〜は、ビッグバンと言っても、それはSFのようなもので、「宇宙の始まりは恐らくそういうもんだろう」程度の概念と思い込んでいたのですが、ここまで厳密な実証の過程を経たものであったとは・・・。
さらに、「世界には始まりがあった」という説は、当然にキリスト教の「創世記」を思い起こすということで、猛烈な宗教論争も避けられません。このへん、客観的学問の極地であるはずの「科学」と、スピリチュアルそのものの「宗教」とが正面から対峙している。日本では考えられない議論のあり方にも想い至りました。
ということで、この本はビッグバンそのものというより、それを題材にして「人類の英知への道のり」を解き明かすことに重点を置いたものなんだ、ということが良く分かります。「科学史」をうんと分かりやすく、万人に提供すると同時に、ニュートンやアインシュタインといった誰でも知ってる科学者の光り輝く業績の影に、何十、何百という名も知れぬ科学者たちの「地と汗と涙」が眠っているんだと。
そういう意味で、著者サイモン・シンの力量は、「フェルマーの定理」に続き。今回も充分証明されました。
さらに評判の高い「暗号解読」も読まないといけません。「代替医療のトリック」も早く届かないかな。
・簡単に宇宙が分かる名著
皆さん、宇宙がどのように誕生したかご存知でしょうか。
おそらく、ビックバンという大爆発で宇宙ができたとどこか聞いたことがあるかも知れません。
でも、なんとなく知っているだけでどうしてそんなことがわかるのか不思議ではないでしょうか。
そんな不思議に答えてくれるのがこの本です。でも、この本は宇宙がどのように作られたかを説明する本ではありません。
宇宙の不思議が科学者によってどのように解明されたきたかを語る物語なのです。物語は紀元前から現代までの壮大なスケールで語られます。
そのため、人類が歩んだ天文学の歴史を積み上げ式に説明しているため難しいことが非常に簡単に理解できます。
語られている内容は非常に高度だと思いますが、まさにそこにはドラマが語らえているためすらすらと読め気がつくとすばらしい科学の知識が身に付きます。
例えば、本書を読むとアインシュタインの相対性理論がわかっちゃいます。
また、太陽の距離のはかり方、遠く離れた惑星や宇宙がどのような成分でできているのがなぜわかるのかなどなど一般的に不思議に思うことが全部わかります。
それもそのはず、著者はサイモン・シンは「フェルマーの最終定理」、「暗号解読」などのベストセラーを書いた科学を一般的にわかりやすく伝えることで有名な人です。
文系の人はもちろん、ぜひ中高生にも読んでもらいたいと思います。もし、私がこの本を中学、高校時代に読んでいたらもしかしたら天文学者になっていたかも知れません。
コストパフォーマンスもいいおすすめ本です。
・死屍累々とでも言うべきか
上巻で天動説から一挙に赤方偏位くらいまで行ってしまい、この先一体
どうなるのかなと思っていました。
下巻は「定常モデルかビッグバンモデルか」という議論を丹念に丹念に
辿り、とにかく丹念でした。
かつて、偉大なる科学的発見は、一人の偉大なる科学者によって達成さ
れましたが、今日では一人の業績に結実されるのは難しい。
陽が当たった人、当たらなかった人。出し抜いた人、出し抜かれた人。
無視された人、奇跡のように発掘された人。
まるで映画のエンドロールのようです。
それら「死屍累々」とでも言えそうな土台の上に、最先端理論が築かれ、
これからも築かれ続けることを予想させてくれる、充実した本でした。
・宇宙の謎に迫る物理史です。
本書(上下巻)では、宇宙創成の謎に挑戦してきた人類史、科学史にスポットを当てる。古代ギリシャに始まった天文学。地球、月、太陽の大きさや距離を推定した古代天文学者に始まり、暗黒の中世での停滞を乗り越え、天動説を覆したコペルニクス、ガリレオ。初期地動説が生み出す誤差を解消する理論を打ち出したケプラー。ニュートン力学を超え、相対性理論を生み出したアインシュタイン。彼の生涯2つの誤りの一つである静的宇宙モデルを覆したビッグバン宇宙モデルの設立まで、事細かに解説する。
さすがサイモン・シンと思わせる見事な描写は、読むものを引き付けて離さない。本書で書かれていることは、すべて良く知られた事実であるにもかかわらず、それを一同に系統立てて説明する手法は流れるような心地よいリズムを生み出し、一気に読まずには入られない。すばらしい。
・科学的なことを自分にひきつけて考えること。
本書のレビューに関しては上巻側で既に書いた通りだ。
天地創成 下巻の白眉は 実は 訳者あとがきではないかとひそかに思う。単行本段階のあとがきと 文庫になった際のあとがきと二つ載せているが どちらも 訳者の思い入れと 読者へのメッセージに満ちている。
特に後者の後書きで 訳者は「本書の真の主人公は 『科学的方法』だったのだ。シンは科学的方法をみんなに知ってほしかった」と喝破している。この「読み取り」は 僕にも実に腑に落ちるものがあった。実際 本書でシンが繰り返し描いているのは「科学的とはどういうものなのか」という 極めて哲学的でもある話である。
これは 別に 宇宙論だけではない。僕らの日常にも 十分通用する話だ。例えば セブンイレブンが唱える「仮説と検証」という言葉にも 「科学的」という響きが伴っている。
宇宙論の本で コンビニの話を持ち出すのも 下世話かもしれないが 僕らの日々で「科学的とは何か」を考えるには 下世話な自分にひきつけて考えない限り 意味をなさないことも確かなのだ。また それこそが著者の希望であろうし 訳者の期待なのではないかと僕は思う。
それにしても大変勉強になった。
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