Amazonカスタマーのレビュー
・嫌な感じが。
読後に不快感が残ります。・・・仮に現代の日本社会に不満感、不完全感などが鬱積しているとするならば、その不快感、不満はこういうものだよね、と作者は「『決壊』を読む、読書そのものから得る不快」と「社会に対する不快」を重ね合わせて読者に提示したがっているかのようです。
つまり読者が不快に感じれば感じるほど、それが作者の意図である、というような。
ぼくにはそれが作者の「勘違い」であり「悪趣味」であるように思えます。好きじゃないですね。
・・・・というか、「好きじゃないよ、こんな本燃やしちゃえ!!」と僕が思うように、社会的な不満を小説に託して読者が個人的に怒りを顕在化させる、そのためにこの小説をスケープゴートとして利用する、してほしい、というようなことまでを作者は想定しているように思えるのですが。作者にもて遊ばれている感じがして、そういうのがすごく嫌な感じでした。
・はっきり言って長すぎ
推理小説なのか、何なのか、現代を取り巻くいろいろな問題について書いてあり、面白いとは思いましたが、ただこの物語に上下合わせて1000ページ近くの長さが必要なんでしょうか?!
読むのにすごく時間がかかりました。
・インテリの決壊- 古いテーマだけど
講談社のSYに勧められて読了。ブンガクとしてははっきり言って古臭い。インテリが生きる目的を見つけられずに狂っていくという筋書きは、明治時代からある。たとえば、『それから』によく似ていると思う。結末とか特に。代助を狂わせたのは三千代との恋愛だったが、崇を狂わせたのは無差別犯罪だった。恋愛もこの殺人も、(文字通り)無差別で非論理的だというところで似ている。明治時代の昔から、小説の主人公たちは非論理的出来事に弱い。
クラシック関係の人が読んだら怒るだろうなあ。「これは一体何なのだろう?」って、ラジオから流れるクラシック音楽に対する崇の疑問だが、一般読者の「ブンガク」に対する疑問と重なる。ブンガクも所詮、ちんどん屋に毛が生えたような作家たちと、馬の尻から伸びた毛のような批評家とかの戯言に過ぎないものなのかもしれない。平野啓一郎は、その辺自覚してこんな挑発的な書き方しているように思える。ただのナイーブな人じゃないのだろう。
エンターテイメントとしてははっきし言ってとてもおもしろいし、久々にブンガクって何だろうって考えるきっかけになった。結末が気に食わないんだが、印象度を加味して五つ☆。
・素晴らしき現代(日本)の写実
想像や未来の予知などと言うよりは、明らかに現状を写実したものに近い。初めに素晴らしいと言ったように私自身はこの事を高く評価したいが、それでも同時にこの小説に欠点があるとすればその写実性になるだろうとも言わねばならないと思う。つまりそれは写実以上のものではない、現代日本に蔓延する病理とそれに対して実際にある悲鳴や批判、戸惑いやさらには共感、支持など、そういう実際にあるものだけをよく描いた、という「だけ」という言い方も恐らく全くの不可能ではないだろう、という事だ。その場合、本作の極めて優れた長所や意義はそのままケチをつける理由にもなる。実際本作で語られることは極めて切実で我々の身に、いや心に迫ってくるが、「なぜ人を殺してはいけないか」という問いを初めとして、どれもこれも殆どがどこかで聞いた事ある事ばかりである。小難しい言葉で飾られた思想のごときものも実質は同じであり、結局のところそれは今の時代の状況、現代人の抱える思いや言葉を代弁し語り、時代精神をそのまま描いただけなのである。本作のそういう時代精神・時代状況の写実は専ら殺人事件や犯罪をめぐる諸問題や諸言説を対象としている。責任能力や精神病の問題から警察の取調べの問題まで現代日本で騒がれる犯罪関係、法律関係のあらゆる問題が本作内には凝縮され扱われていると言えよう。それは私としては高く評価できる極めて意義ある事に思えた。
・現実から目をそらすな!
読み終えて30分くらい放心してしまった。
未成年の犯罪、家庭内の犯罪、家族の崩壊、ネット社会の闇…、ある事件を通して現代性を描ききっている。
そして考えたくもないが、家族というものが、その言葉だけで力を持っていた時代は終わった、その言葉が何かを繋ぎとめているというのは幻想に過ぎないと、喉元に突きつけてくるかのような救いようのない結末をもって、じゃあどうすれば?の前に、まずはこんな時代だという現実を正しく認識しろと言わんばかりだ。
「ホテルルワンダ」という映画の中に、「(難民や内戦をニュース映像で見て)可哀想ね、と言いながら食事を続ける(先進国の人々)」という意味のセリフがあるが、この本は、読後未成年や家族間の犯罪などのニュースを見ると、食事が続けられなくなる位の威力を持っている。
その種の犯罪が、自分の住む町で起こったと考えられる位、その恐ろしさが皮膚感覚に迫ってくる。
少年の母親の描写も秀逸。
親子関係…特に女親と息子の間には、多かれ少なかれこういう面があると思う。
だからこそ、この描写が一番恐ろしかった。
人に勧めにくいが、現実に起こっていることを描ききっていること、文学的に極めて高度な構築力があること、現実を直視するという意味で、覚悟をして読んで欲しい。
自分より若い人が、これを書いたということにも、ショックを受ける。