・長い長い一人語り
評判は良いみたいですね。
出版された頃、新聞の書評に載ってました。
ただこれは小説ではなくエッセイだと思います。
著者の言いたいことばかりを出てくる役柄役柄に割り振り、
主人公の崇は著者に一体化されている、という両者の距離感の無さが
どうも読んでいて気恥ずかしく、斜め読みしてしまいました。
というわけで、内容を吟味できなかったのでこの評価。
きちんと読めば深いのかもしれませんが、きちんと読むことに要する
「照れをあえて無視するパワー」が尽きました。
でも斜め読んだ限りでは、2010では今更すぎることばかりの印象。
・下巻だけ読んだが
下巻だけ購入したが、途中から飛ばし読みになってしまった。登場人物の会話や思考が長すぎてかなりウンザリした。また残酷な殺人や大量殺人が起こる割には現実感がなく、引き込まれるような面白さはなかった。上巻は買わないだろう。
・“決壊”する日本。
読み終わってしばらく放心してしまいました。
著者がタイトルに込めた意味に、じっくりと向き合うことを強要されるように。
“決壊”という言葉からは、ただキレるとか壊れるというのではなく、
堤防で抑えていたものが抑えきれなくなるというニュアンスを感じます。
日本という社会の至るところで決壊が生じているということを、
著者はこの上下二巻にわたる重苦しい長編を通して訴えたかったのでしょう。
平凡な一家を襲った連続バラバラ殺人事件を軸に物語は進みます。
が、最初の殺人が起こるのは上巻の最後の方。
それまでの登場人物たちの日常の中にこそ
決壊する要素が見え隠れしていることを丹念に描いていきます。
教育の問題点、ネット社会の恐ろしさ、警察の抱える矛盾など、
様々なテーマを著者なりの視点でえぐっていきます。
著者の平野氏とは年が近く、感覚が近しいことを感じました。
特に酒鬼薔薇事件に関しては、著者なりの解釈を
展開したかったことがうかがえます。
決して読んでいて気持ちのいい小説ではありません。
ただ、一度読み出したら、途中で本を置くことを否応なく拒否するような
磁力があります。
・難解。
読み終えての率直な感想は、”難しい本に手を出しちゃった”です。
上巻の途中では、あまりの難しいお話に読み飛ばしてしまったほど。
全体をミステリーとひと括りにした場合は、
バラバラ殺人という現代で起こる事件を、
家族の崩壊と絡ませて丁寧に描いていたと思います。
子供が罪を犯したとき、起こしたかもしれないとき、
親はどうなるのか。
人ごととは思えませんでした。
最後まで読んで思いましたが、
上巻のあの難しさは何だったんでしょうか。
できれば下巻のように読みやすくして欲しかったです。
単純なミステリーを好む、私と同じ様なタイプの方には、
あまりオススメしません。
・絶望的であるが愛を肯定している
読み終えて大江健三郎の「万延元年のフットボール」と同じ読後感と小説の力強さを、体の震えとともに感じた。
本書における殺人事件の今日性や、「秋葉原」事件を予告したようなテロの時代性を描いていることにも感嘆するが、事件や犯人のすべてが明らかになった後の100ページこそ、作者の最も切実な問いであった。初めは気に入らなかったが、いつの間にか感情移入してしまった主人公「崇」のたどる運命が説得力をもって語られている。
そしてさらにVTRに残された犠牲者が訴える愛の叫びこそ作者の本心であると確信した。平凡だがその思いの重量に、論理の肥大化した主人公は耐えられなかったのだ。「崇」もまた、現代社会の犠牲者の一人に他ならない。
絶望的な結末で読者の多数が気に入らないかも知れないが、希望や救いが容易に手に入らないことを理解し受け入れていると思う。終わり方はあれしかない!