・物理の歴史としても面白い
上巻では、ケプラー、ガリレオ、ニュートン、アインシュタインの業績を躍動性を持たせて紹介している。
発見の連続性、お互いの業績の関連がよくわかり、どのようにして物理が発展したのか
思いをはせることができる。
アインシュタインも特別な人ではなく、歴史の流れで必然的に出た理論ともいえる・・言い過ぎた・・
下巻ではさらにその後の発見を次々紹介している。
最新のところまでは紹介していないが、現在の天文学があまりに発展しすぎ、一方で宇宙が深遠すぎる
ということは伝わってきた。
この先を知りたい人は、「パラレルワールド」を読めばいいと思う。
本書だけでも、個人的にはお腹一杯だった。
・理系大学生の必読書
私は電離圏プラズマを研究対象にしている研究者です。
本書に出てくるような宇宙物理現象は専門外なのですが、
学生時代から物理全般に興味があり、、
アインシュタインの相対性理論から始まるビックバン理論には特に興味がありました。
しかしながら所詮専門外。趣味程度にブルーバックス・シリーズなどを時折手に取り、
多少の薀蓄(うんちく)を得て満足していました。
大学教養の相対論の講義を、大学院生になってから受けに行ったりもしていました。
ただ、どうしても全体像がはっきりしません。
「この数式はどうして重要なのか?」、
「この理論は何に役立つのか?」、
といった疑問が残ったままです。
私が学生時代に感じていた、このような疑問は
最近の学生の理系離れに直結しているのではないでしょうか?
2008年に物理学でノーベル賞を受賞された小林誠先生が
「今の教科書には最低限のことしか書いてない。全体のストーリーが見えない」
とおっしゃっている通り、現代の理系教育の問題点の一つがそこにあったと思います。
例え数式の羅列でも、人間の作り出した学問としての物理や数学において、
たった一行の数式の中に多くの人間の歴史や、彼等の生きた時代の歴史が詰まっているのです。
現代の教科書にはない、ストーリーを著者サイモン・シンは完璧に伝えてくれます。
私が大学で物理を教えることがあるなら、本著を副読本とし、学生にレポートを書かせるでしょう。
読み切るのに一週間ほどかかりましたが、過去の読書とは比べ物にならないぐらい、多くのことを学ぶことができました。
・人生を理解するための入門書
宇宙をどう解釈するかを極めて分かりやすく解説した宇宙論への入門書。「テクノロジーは生と死をより快適にするために役立ち、それに対して科学は、ひたすら世界を理解しようとする努力だ」との言葉どおり、最新技術やデータの羅列ではなく、人生を理解するための入門書でもある。
・期待通りとはいかず。
「フェルマーの最終定理」「暗号解読」の面白さを期待して読んだが、前二作に比べて面白みに欠ける。おそらくストーリー性に欠け、全体的に説明調であるからだろう。所々に挿入される説明のための図や表が、読者をぐいぐい引っ張っていってくれるはずの文章を分断してしまう。サイモンシンがこの分野の専門だから、妥協できなかったのだろうか。細かいところに気をとられてしまう記述は、証明を巻末に付録にして、ドラマチックな展開をみせたフェルマーとは真逆の空気を感じる。宇宙論のポピュラーサイエンスの本を読んだ人はあえて読む必要はないだろう。サイモンシンを読んだことが無い人には、「フェルマーの最終定理」「暗号解読」から入ることを勧める。
・上巻は悠々と宇宙論の歴史のレビュー
上巻を読んだところでレビューを書くのもなんですが・・・原書は一巻ものだし・・・レビューが上下巻別に出てくるので。
『フェルマーの最終定理』も『暗号解読』も面白かったので、見つけてすぐに購入。焦点は確かにビッグバン宇宙論なのだが、西洋の教養主義らしく、ギリシャ時代の宇宙認識から始まって、コペルニクス、ガリレオ、ニュートン、アインシュタインと、上巻は悠々と進んで、ハッブルが系外銀河のスペクトル赤方偏移を見いだすところまで。銀河の大きさを初めて類推したハーシェルは全恒星が同じ明るさとして概算した事(意外にも決して悪くない見積もりが得られている)セファイド変光星を用いた距離の見積もりの発見の経緯など、知らないことも沢山あって、楽しく読めた。
ただ、特殊相対論の紹介はちょっと賛成できなかった。特殊相対論は電磁気学の基本方程式であるマックスウェル方程式がガリレオ変換とコンパチブルでないことの解決として、運動方程式の方を変更する事で、電磁気学と力学の矛盾を解消したことに大きな意味があると、私は思っている。本書では電磁気学の話がまったく出てこなくて、エーテル否定の説明も、媒質(光の場合エーテル)の運動との関わりで極めて不十分なものになっている。特に、光速度一定の原理を、極めて天下りに与えているのが気になるところだ。この手の説明が世の中の「相対論は間違っている」本の出現を手助けしているのだから、もう少し工夫が必要だったと思う。
というところで、あとは下巻を読んでからにします。