・高踏派ミステリ
作者はハーヴァード大の英文科を首席で卒業、現在は今でも存在する「ダンテ・クラブ」の一員の由。本書は「ダンテ・クラブ」発足時の懐古談にミステリ風味を加味したものと言える。
舞台は南北戦争直後のボストンとケンブリッジ(アメリカ)。ケンブリッジにはハーヴァード大や現在のMITがある。私は知らなかったが、当時はダンテはそのカトリック的要素から、プロテスタントの国アメリカでは紹介されていなかったようだ。そこで、ハーヴァード大の教授、元教授の詩人達が「ダンテ・クラブ」を結成し、「神曲」の翻訳に取り掛かる。時を同じくして起こる猟奇連続殺人事件。クラブのメンバの一人が、その猟奇事件が「神曲」の地獄篇の劫罰を模している事に気付く。ここで自己撞着が起こる。「我々以外は知らない筈の「神曲」を犯人はどうやって知り得たのか ?」。
登場人物の中では、マサチューセッツ州初の黒人刑事が光る。J.ボール「夜の熱気の中で」と同じ設定で、周囲の偏見の中、聡明な頭脳と地道な捜査で犯人に迫って行く姿は本作に一本筋を通している。南北戦争の光の部分である。そして、クラブの一人は地獄篇の吟味の末、犯人像を推定し、南北戦争の影を見る。この対比は上手いと思った。
当時の文壇論議も面白い。詩人としてのポーを実名で貶す辺りは、ボストンvsニューヨークの対抗意識が当時から強かった事を窺わせる。また、本作が古典ミステリの揶揄である事を示唆している。作者のディッレタントとスノッブリズムが鼻に付く部分もあるが、高踏派ミステリとして文句なく楽しめる秀作。
・分厚い翻訳ものが好きな方にお勧め
翻訳ものの分厚いハードカバーの推理ものを、
じっくり読むことがお好きな方は、
本書にご満足いただけるに違いありません。
話が長いし、登場人物は多く、難解な台詞が飛び出します。
ダンテの神曲の解釈が謎解きの中心を占めるので、
ちんぷんかんぷんな部分もあります。
19世紀のアメリカ(ボストン)の風俗や南北戦争直後の時代の空気など、
読んでいて「なるほど」と思わせる記述、描写も多く、
歴史小説の側面もあります。
肝心のストーリーですが、
犯人の性格付け、描写など若干甘い部分もありますが、
最近読んだアレックスクロスシリーズなどと比べると、
練りこまれている印象で、
最後まで面白く読み続けられました。
・ようわからんよ~^^;
ダビンチコードブームの時、同じ系統の本みたいな紹介の仕方されてて迷わずにこの本を手にしたのだけれども、内容は全くの大違いでがっかりでした。
なにせ話の展開が遅い上に間延びしててさらにつまらない。
作者はいろんな情報を意気込んで詰め込もうとしてる感じがしたけどそれならば小説という形式で発表しない方がよかったかも。教養書とか論文とか他にいくらでも適切な表現形態は選べたはず。どうしても小説でいくのならもっともっと読者に読ませるための努力が必要では?・・私みたいなミステリ&アメリカの歴史の門外漢もいるのです。もっとも最初から読者を選んでいるのならば話は別ですがならダビンチコードとは別物だということを宣伝・書評の場で強調してほしいですね。
それでもワクワクさせてくれるのならまだしもこの本はうーんなんというか表現が死んでるんですよ。人物に華がないというのもあるし。先に進むほどにページをめくるスピードが鈍ってきます。まあ結局門外漢には敷居が高すぎます。
でもまあ思えばきっとわが国の司馬遼太郎さんの著作が翻訳されれば外国の読者もこの種の敷居の高さを感じるかもしれませんね。作者は頭のいい人らしいしアメリカ人には面白いいい本なのでしょうけども門外漢にはだから何?誰?って感じで興味も湧かないし湧くようにはそもそも書かれてない。
わくわくしない歴史や宗教の小説というのがこの本です。
はっきり言って私この本途中で放り出したので本当の意味での評価はできないのですがダビンチコードが面白かったからといってすぐこの本に手を伸ばす人に警告を発したいのであえてこの星数にしました。ご購入はくれぐれも慎重にされた方がいいと思います。
まあこんな意見もあるということでファンの方には拙文ご容赦願います・・・。
・ダンテ・クラブ
『神曲』(原題:La Divina Commedia)をモチーフとしたこの作品は、19世紀のボストンを舞台に、実在した米国の誇る詩人や作家達を登場人物として展開されます。読み始めた頃は、そのようなアメリカ文学界に関する知識がなく物語の設定をなかなか理解できなかったが、登場人物達の背景を知った後にはするすると読み進めることができました。
ただ作品中では各々の登場人物達について詳しく説明がされているわけではないので、自分で調べる必要があります。この辺りは米国では古典となった人物ばかりだということなのかも知れませんね。また素晴らしい人物描写で、各々が“生きた人間”として描かれています。
ミステリーとしても、『神曲』の翻訳と同時に繰り返される見立て殺人の謎が様々な伏線をベースに組み上げられており、単なるサスペンスに終わらないレベルの高さを保っていると感じました。
当時の政治状況や人物像を背景としている『神曲』を理解し、さらにそれをミステリーに仕立てるのは並大抵のことではないでしょう。著者のマシュー・パール氏はハーヴァード在学中に『神曲』を研究した内容をこの作品にこめており、イタリア語による原文の解釈の仕方などサブ・ストーリーも面白い。同じ『神曲』研究者として氏はロングフェローと自分を、時を越えて重ね合わせているとも言えるのかも知れませんね。
ちなみに氏の次回作として"The Poe Shadow"という作品が2006年刊行を予定しているとのこと。まだどういったモチーフなのか情報はありませんが、今から気になるところ。
・バランスがとれていない
テーマも展開もペースも好きなのだが、実際の犯人と犯人像とのバランスを著しく欠いている、それ以外は満点なので、とっても残念だった。最後のデザートがイマイチだと言っているが、そういう期待外れ感も楽しめたとも言える。ダン・ブラウンが脱帽と帯にあったが、脱帽するものは星の数ほどあるだろう。