・解説は大げさ。
本書は作者得意の連作短編ではなく、8編のそれぞれ独立した短編からなり、その構成の点から見て『沙羅は和子の名を呼ぶ』が従来の作品群の中でもっとも近く、オカルト話を数編交えている点でも雰囲気もかなり近い。『沙羅は〜』と異なるのは、本書はミステリー作品集ではないという点ぐらいか。
ただ、『沙羅は〜』に較べて本書は暖かみのある作品が多い点、ずっといいと思う。
本書に登場するのは人間だけでなく、ねこもいれば犬もいるし、最終話では何とザリガニが主役を張っている(笑い)。
皆、それぞれに一生懸命生きていて、時には自分を励ましながら、また時には自分をも騙しながら、涙をこらえ無理に笑顔をつくり、そうしてけなげに頑張っている人(と一部動物)たちの物語ばかりで、どの話もそれぞれにせつなく優しい。
その中で好きなのが、ダメオヤジの話に終始する『ポトスの樹』。
子供のこづかいや給食費をちょろまかし、ラジコン・カーは壊す、遊び相手になれば手加減知らずでケガばかりさせ、子供が川でおぼれかけていても助けようともしない、そんなオヤジに対する恨み辛みのエピソードが延々語られるのだが、それが何となく(他人事だからか)楽しげでに見え、最後に一発逆転というのも痛快。
よくよく思い返してみれば、本書の中で純然たるハッピー・エンドはこの話と『パズルの中の犬』だけで、自分はつくづくハッピー・エンドが好きなんだなと思う。
なお、「まさかこの歳になって、ザリガニの話で泣くなんて思いもしなかった。」との巻末解説は、本書を売らんがために大げさに書かれたものであざとさを感じる。いくら何でもそれはないだろう。
ただ、泣きはしなくても、あっさりと潔いエンディングはいいと思う。
・魔法的トリックは出てきません
モノレールねこ/パズルの中の犬/マイ・フーリッシュ・アンクル/シンデレラのお城/セイムタイム・ネクストイヤー/ちょうちょう/ポトスの樹/バルタン最期の日 を収録した短編集です。帯や解説にもありますが、まさかと思いながらザリガニの最期に涙します。
「家族」ってものを意識せざるを得ないエピソードばかり。家族を得ようとする人、家族間の過去の溝を埋めた人、家族じゃなくても傍にいようとした人、ニセモノでも家族だった人、家族の影を追いかけた人、家族的なチームを手にした人、新しい家族のおかげで不信感をぬぐえた人、家族のために命を落とす者。
きっと、自分の家族のことを思い出したら、泣き笑いせずにはいられないのです。
・どれもホロリとさせてくれます
帯にある「ザリガニの話で泣くなんて思いもしなかった」というコピー。
うそくさいなあと思いつつ、でもこの作者は裏切らないと思っているので購入。
目次を見ても「どこで泣くんだ」と半信半疑だったのにもかかわらず、
結局ほとんどの話でじんわりと泣いてしまった。
いろんな年代を主人公に選び、それに対するもの(ある時は猫、ある時は犬、そしてある時はおじさんだったりする)へのまなざしに優しさをすごく感じる。
最近この作家の違う本を読んだところだったのだが、題材ががらりと変わっていながら
後味のこのほのぼのと温かい思いが同じなのはすごく安心できた。
・猫本ではないけれど
「モノレールねこ」なんてタイトルだと、今はやり(というか、乱発気味)の猫本かと思ってしまいます。でも、中身は加納朋子一流の家族人情話。推理色こそ薄く、「日常の謎」という程のものではないのですが、ちょっと不思議で、読み終えるとほろっとする良いお話ばかりです。日常生活ですり減った心の慰めにぴったりな短編集。
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