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・家族像の変遷
本書は、「部屋に注目して、明治以降住まいがどのように考えられ、また、どのような変化をしてきたのか」を分析しつつ論じており、建築的ハード面というよりも、そこで生活する時代によって異なる家族像や社会像に注目している点が読みやすい。
時代性を反映する家族像に合わせて、住宅の間取りが変遷していく様子にはそれなりのストーリーがあり、なかなか興味深い。今の日本では住まいは家族のためのものであるのは疑う余地のない常識であるが、かつては接客の場(客間)が中心で、家族の生活の場(居間)が追いやられていたことなどの歴史的変遷が語られている。
具体的に1934年の家事教科書「家事新講」での間取りの新傾向として以下の5点を取り上げている。
@接客本位をやめて家人本位にする
A間取りを単純にする
B廊下を短くする
C相関連する部屋を隣接する
Dリビングルームシステムを採用する
リビングルームシステムとは、室数を減じて遊ばせる部屋がないように、居間にも客間にも書斎にも食堂にも転用できるリビングルームの設置を提案するものあり、戦時下の不景気時代に求められた住まいのコンパクト化を反映している。
日本の現状の住まいから察するに、接客の機能が完全に葬り去られているように思えるのが残念で、やはり友人・知人が集まれるような「接客」とは言わずとも「楽しく集まれる」場は欲しいところ。
個人的には「誰もいなくなった部屋=今」の章で取り上げられている、居間のない個室だけの住まい「個室群住居」が、建築家:黒沢隆氏によって早くも1960年代に提案されているのは驚き。その発想はさらに極端化し、山本理顕設計の住宅では、居間的な室が完全に消失し、中庭になってしまっている。これも、従来の家族像の崩壊を意味しているのだろうか
・近代の間取り史として楽しめる
内容的には近代日本における間取りの変遷。
全体としての主張は鮮明ではないものの、個々の
エピソードは興味深く、その意味で楽しめる。
・参考になる
建築に携わるものとして参考なりました。
・わたしたちが生活する「住宅」を見つめ直す
著者の内田さんは今では近代住宅史研究の大家となられましたが、そんな今までの研究をとてもわかりやすい形で読者に提供する「住宅読本」となっています。わたしたちが普段なにげなく生活している住宅の間取り、アパートを借りるとき自明のものとして考えているLDK、そんな私たちの当たり前がどんな経緯でできあがってきたのかが「間取り」を通して楽しく学べる本です。そしてこれからの間取りはどんなふうになっていくんだろうと一緒に考えて下さい。このソフトな心遣いは著者が女子大の先生なればこそかもしれません。
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