・医療問題にも示唆を
医療問題には、公共事業論、税の財源論、ライフサイクル論、社会保障論、雇用論、年金論、教育論、再分配論、定常型社会論、資本主義論、環境論、コミュニティ論
ローカル、ナショナル、リージョナル、グローバルな観点と
歴史の流れという観点も必要です。
総合政策の中のひとつとして捉えなければきっとうまい調整が効きません。これらが整合性をもってあるいい方向に動いたときにのみ医療を提供する側も医療を受ける側も環境が改善すると思います。医療だけを見つめて、小手先のシステムのみ変えてもより不自然になるだけです。
そんなところにちょっとした示唆を与えてくれました。
http://blog.goo.ne.jp/peak1839/e/94c986c9f73417e0cd1b2afb0254c9c9
・新たな選択肢を模索しませんか?
本書は、著者が一貫して追求しているあるべき日本の社会保障のあり方について、「持
続可能な福祉社会」というコンセプトに基づき、これまでの際限ない経済拡大路線から
脱し、高齢化に伴う成熟経済における定常状態に向けた社会の構想を、これまでの著者
の主張をさらに膨らませる形で、より具体的に議論を展開していく内容になっています。
そこで強調されているのが「人生前半の社会保障」という概念であり、これまで「カイ
シャ」と「家族」により”見えない社会保障”として担われてきた若者の教育や福祉が、
経済格差の拡大により担保できなくなった現在、社会保障としてきちんと国が手当てを
行うべきであるといった主張となっています。
それと同時に、定常型社会を支える新たなコミュニティの形成が必要だとし、それは従
来型の共同体の一体意識と個人をベースとする公共意識が融合した形となるだろうと予
測します。さらに、人類が生き残るためにはグローバルな視点での定常型社会の実現が
不可欠だとし、環境資源の制限を考慮した世界的な福祉社会の構想を展開します。
個人的には著者の主張に賛成であり、このような社会へと転換することを望みますが、
しかしながら、現実問題としてやはり経済問題が大きく立ちはだかっていると思われ、
グローバル化の進展する世界において、激しい競争の中での企業の生き残りが模索される
現在、著者の提唱する定常型社会における産業経済構造の姿がなかなか想像できません。
けれども、現在進むグローバル化の流れは止められませんが、グローバル化の中でどの
ような生き方でも選択可能な社会的基盤を作ることは不可欠であり、社会保障の概念は、
今後益々重要になるものと思われます。
これまでの政治が、グローバル企業の競争を支援し、経済的拡大による富を社会全体へ
といき渡させることを目標としてきたとするならば、これからの政治は、世界的競争に
乗れずにこぼれ落ちた人たちの生活を、いかに保障していくかに重点を置いた政策へと
シフトすることは当然の転換だと思います。
政治の役割が、国民の幸福のためにあるのだとするならば、何が真の幸福かを国民自身
が考え選択し、激変する社会状況の中でどのように行動するのかを、政治に対して意志
表示する必要があるのだと思います。
そのような意味からも、本書は来るべき社会のあり方の一つの有力なモデルを提示する
ものであり、我々にとって望ましい社会をいかに構築していくかの大きなヒントになる
本だと思います。
・将来の社会のありようまで視野にいれた社会保障論
著者の広井良典氏は社会保障分野では好きなほうに入ります。なにより昔読んだ「日本の社会保障」(岩波新書)が印象に残っています。欧米比較も交えて社会保障のなんたるかを分かりやすく解説してくれた好著でした。
さてその広井氏が、本書では「人生前半の社会保障」というテーマを掲げながら、将来の日本のあり姿を「持続可能な福祉社会」というコンセプトで提言してみせます。そしてその議論は、社会保障、雇用、教育から環境、コミュニティと幅広く展開されていきます。紙幅が限られる新書の限界からか最後のほうはかなり議論が広がりすぎの印象はありますが、それでも、個々にみると示唆に富む提言が多く含まれており、新たな視点に気づかされます。
例えば、「社会保障としての教育」という考え方は新鮮でした。若年層を前期・後期に分け、後期(30歳くらいまで!)に対して財政支出を拡大させ(若年年金など)、教育訓練を強化して機会の平等を確保すべき、という指摘は、大学を卒業した大の大人にそこまでやるの?という違和感はあるものの、非常にユニークな提言だと思いました。
国政(審議会など)レベルで社会保障制度のあり方を議論するときには、瑣末な制度論に終始しがちなのですが、税収および保険料収入が先細りするなかで「どの世代に」「どのような意味をもって」サービスを注力するのかを考えるには、「どのような社会を実現したいのか」という理念が不可欠と思います。社会保障制度を考えること=くにのかたちを考えること。政治家にはこのくらい骨太な議論を期待したいものです。
・理念を越えて
社会保障についてのいくつかの理念を実際の政策として提案しようとしている著者の姿勢には本当に共感できる。私たちが抑えておかなければならない統計的事実も数多く含まれてい
る。その中で、実は私が一番に共感を覚えたのは、日本人のコミュニケーションの特殊なあり方を著者が指摘しているところだ。”稲作の遺伝子”とよぶ私たちの関係のとり方を変化させることが、新しい社会のあり方を考えていく上で必要だとする。
ただ、こうしたやや理念的なことと、日本の社会保障の問題点という社会問題がうまくリンクしているかというと、すこし疑問をいだかざるおえない。
でも、このあたりがこの著作の面白さなのかもしれないし、ややごった煮にみえるのもそうした困難な課題に挑もうという著者の意気込みの表れなのかも。。。
・具体的かつ総合的な対案
本書は、1961年に生まれ、厚生省に勤務した後、社会保障やケア等に関する幅広い研究を行っている著者が、2006年に刊行した、小泉改革に対するトータルな対案である(書名の定義は7頁を参照)。戦後日本は、保守主義と成長志向により特徴づけられ、会社と家族が国家による(公共事業を除けば)貧弱な福祉の肩代わりをしてきたが、1980年代前後から、成熟社会化による社会的目標の喪失、「ムラ社会」の単位の縮小による個人主義化が顕在化し、従来の制度の機能不全が目立ってきた。この現状を踏まえて、著者は後期子どもへの社会保障(高等教育やチャレンジの機会の保障)と前期高齢者の社会的活用、公共事業型社会保障から医療・福祉型社会保障への転換、社会保険と基礎年金が折衷された現行制度から、厚めの基礎年金を税によって一律に保障し報酬比例部分は民営化する年金制度への転換、慢性疾患等への疾病構造の変化に伴う心理的ケアの重視や政策決定への市民参加の拡大、失業保障とワークシェアリングの推進、資産レベルの再分配などの事前的分配の強化、社会保障財源としての環境税の導入等々を提唱し、個人ベースの公共意識と共同体的な一体意識を均衡させ、グローバル、リージョナル、ナショナル、ローカルな各レベルでの対策とその相互調整を行い、環境主義と結びついた社会民主主義を、追求すべき政策として提示する。以上が本書のあらましであり、やや楽観的に思えなくもないが、データをもとに平易に具体的かつ総合的な対案を示した本であり、ギデンズ『第三の道』の議論と関連する記述も多い。賛否は具体的な論点ごとに検討すべきだろうが、一読の価値はある。