Amazonカスタマーのレビュー
・面白いといえるものです
3つのストーリーが、独立しながらお互いに影響しあいながら展開される僕好みの展開。
そういった展開の書籍って、往々にして重く難しくなりがちですがむしろ軽快かつ読みやすい!ので、さくさくと読み進められます。
最初のほうは、なんのことやらといった冗長な展開ですが、徐々に面白くなってきます。
もう少し、終わりのほうがなぁ・・・と思ったりしたので、星3つとさせて頂きました。
・イギリス文学っぽい佳作
久々にイギリス文学(あえて「小説」ではなく)らしい作品に出会いましたね.とにかく,どう考えても結びつきようがない3つのエピソードが,どう絡んでいくか,非常にわくわくします.登場するスノッブ的な題材は文系と理系,両方守備範囲がないと理解に困る部分もありますが,それを読解すること自体はこの小説の主旨ではないので大丈夫です.
ただ,客観的には理系の理系っぽさがどうかと思う読者はいるのかと(私は理系なので大丈夫でしたが).そういう人はジュリアンバーンズの作品の方が気に入るのではないかと思います.
・わたしもこの数カ月のあいだに、気がつけばパスティーシュと化していたのだ。
本作は表面上、三つのスレッドから構成されています。知的好奇心は旺盛ながらも世俗事からは超越した愛書家のお爺さんのウェブ入門と冒険の書かれた手紙のパート。ルソーの『告白』で端役として登場するフェランとミナールという道化者たちが主役を張る逃走と妄想の物語。そして自称物書きによる文学講座と恋情に満ちた手記。それぞれがユーモアやアイロニー、ウィットにあふれていて楽しく読み出していけます。しかし、各パートが徐々に情報をリンクし緊密なネットワークを形成していくと互いに侵食しあい、虚構と現実を彷徨うようなダイナミックな作品構造の中に迷い込んでしまいます。語りで騙る<わたし自身>ではない<わたし>とは誰なのか、そもそも今読んでるこのエピソードは一体どっち向きでどちら側なのか、といったようなことを常に意識させられます。エピローグでの円環的着地も決まっており文学界のエッシャーという謳い文句は伊達ではありません。
作品の最表層では幻のロジェ版『百科全書』が各パートを繋げています。18世紀中葉に執筆されたとされるその書には「シュレディンガーの猫」、「中国語の部屋」、事後確率の「モンティ・ホール問題」などを彷佛させる内容が満載され楽しめます。量子力学から人工知能をからめた宇宙論を展開し世界情報網構想を打ち立てるロジェとは天才なのか狂人なのか。したり顔で納得すればいいのか笑い飛ばせばいいのか迷うところも多々ありました。しかし、こんなロジェ理論や自称物書きによる高度な文学論などの知性のきらめきがこれでもかと披露されながらも、衒学的な小賢しさを全く感じさせないところがとても好感を持てます。それは、愚かしくもあれば哀しくもある登場人物たちへの著者の細やかな気配りと温かな視線があふれているからなのででしょう。要は楽しめればいいんですというクルミーの姿勢を随所に感じられるのが本書の素晴らしいところです。
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