・決定的に「何か」が狂っている傑作
普段海外ミステリーや怪奇小説、日本の推理小説を好んで読んでいます。
26歳女です。
子供の頃とても空想家だったので主人公のメリキャットに非常に入れ込んで読みました。
気がつくと何度も手に取り、繰り返し読んでいます。
本好き、魔法好きの女性なら誰もがメリキャットの憤りに共感できるかと思います。
侵入者チャールズは憎むべき存在だし、町の人の悪意は心底酷いと思う。
(あくまでもメリキャットの視点だからそう感じざるを得ないのですが)
……が、確実に何かが、どこかがおかしい。ずれている。この違和感はなんだろう?
また、姉のコンスタンスと伯父さんもどこかおかしい。
伯父さんから語られる「あの日」の真相は読者をぞっとさせる。
驚きというより、もし正常な精神の持ち主であれば現在のこの状況はおかしくないか?
もし気づいていて、あえてそうしているのだとしたら……
うう、怖い。
でもとても美しい。
このぞっとする感じは何?幽霊も怪奇現象も殺人鬼も出てこない。
それなのに、幽霊も怪奇現象も殺人鬼もそこにいる気がする。
まるでモンスターを従えた……この世のあらゆる「非現実的な」怪物と
仲良く暮らしている女王がそこに座って、読者が被った善人の皮を見抜いて本性を
ちくちく突付いてくるような。
うーん、うまく言えない。
ちなみに作家桜庭一樹氏、恩田陸氏のお気に入りでもあるそうなので、両作者の本が
お好きな方は是非ぜひ読んでみるべきです。(解説は桜庭氏)
「ホーンティング」というタイトルで映画化された、魔女シャーリー・ジャクスン「丘の屋敷」
(以前のタイトルは「たたり」)は超常現象系傑作なのでこちらもぜひ。
・生活したいだけなんです。
感想:
恐怖とは「生活を成立させている現実への認識を脅かすもの」と捉えると、事理は明確になるような気がします。
あるいは、わたし達は、何(どの現実への認識)を排除しなければ、生活ができないのか?
わたし達は何を思って生活していますでしょうか。
何が生活の根幹にある価値観なのでしょうか。そしてその前提になる記憶とは?
自分の持つすべての記憶について、それが現実だと確認・証明しながら生きている人はほとんどいないでしょう。
(常にすべての自分の記憶を確認・証明している人がいるとしたら病気です)
だからこそ、私たちは盲目の現実を生きているという迷路に陥れられる可能性を排除する事ができないはずです。
そのため私たちは、「ある者たち」は排除しなければ生きていけない。
そしてそれは、罪です。
と思いました。
うーん・・・どうも言葉にしきれません。そんな残余が残ります。
なので、良い作品です。
主題はまったく異なりますが、感触・趣はニコール・キッドマン主演の映画「アザーズ」と似てると思いました。
・無垢な敵意VS自覚ある悪意
壮絶な負の感情がぶつかり合う小説です。長編と言うにはページ数も少なく、2日程度で読みきってしまいましたが(時間がある方なら一日で充分でしょう)、読後感のもやもやはずいぶんながいことつづいています。
冒頭、語り手の少女メリキャットが村人から蔑まれながら、家(お城)に帰り着くシーンから始まりますが、ここからは村人の集団の悪意がひしひし伝わってきます。集団対個人。ここで感じる恐怖はいじめを見るときの嫌悪感にちかいです。一人の少女が大人にも子供にもよってたかってからかわれるのを見ていると、メリキャットがなんどもつぶやく「みんな死んじゃえばいいのに」のせりふも当たり前に思えてきます。城に閉じこもって外を怖がる姉と、体の不自由な伯父を、無邪気な妄想の魔法で守ろうとする少女。メリキャットの印象は初めそんな感じでした。 しかし読み進んでいくうち、メリキャットの中の敵意が底知れないものだということに気がつきました。この敵意は無垢で無自覚でした。村人達のブラックウッド家に対する悪意は自覚的でしかも彼らはたった一人でブラックウッドと対峙することはできません。いつも徒党を組まないといけない。しかしメリキャットはいつもたっと一人で敵意をむき出しにしています。メリキャットに感じる恐怖は怪物を見る感覚に近い。
つまり「ずっとお城で暮らしてる」をよむホラー好きの皆さんは二種類の恐怖の相克を楽しめるわけです。
村人の燃え上がるような悪意とメリキャットの冷たくてゆるぎない敵意の対決。最後はどちらが残るのでしょう。
・直接的な恐怖はないが・・・
本著で出てくる狂気は普段は体裁とか常識等がはばかっていて表には表れないがほとんどの人間に潜んでいるのではと。もしも登場人物のように同じ感情をいだき、同じ局面に出会ってしまったら同じ行動を取っているのではと。
想像力豊かな人が読むと、かなり来ると思います。私のような鈍感な人間ですらその風景がありありと浮かんできましたから・・・。
・こわすぎる
Shirley Jacksonの『We Have Always Lived in the Castle』(1962年)の翻訳。
1994年にも学習研究社から山下義之氏の訳で出ているが、それとは別の訳。
『たたり』や「くじ」で知られるアメリカの女流ホラー作家だが、本書もめちゃめちゃ恐かった。超自然的なものとかは出てこないのだが、人間の狂気と悪意が「可愛らしく」描かれており、ぞっとさせられる。
寝る前に読むのは絶対にやめた方がいい。
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