・愛しい日々。
2004年に『夕凪の街 桜の国』が文化庁のマンガ部門大賞をとって、一躍時の人になったこの作者。
国から賞をもらった漫画家なんて...と食わず嫌いのそこのあなた!(僕のことですが)
損してます。
亡くなった妻が残してくれた生活ノートを頼りに初老の日々を生きる主夫の主人公。
情緒あふれる語り口なのに、ほんのすこし毒があって、
全編ほのかにおかしくて、ページの隅々まで愛おしい。
この作品ですっかり作者のファンになってしまいました。
全ページくすくす笑って、読み終えると、肩の力がすーっと抜けてる。
そんな本です。
たまの日曜にちょっと本でも読みたいなあ、という人におすすめ。
・「何トドみたあに転げとんな。おどれらみなしごうしてお好み焼きんいれちゃろか?」
本書は『夕凪の街桜の国』で知られる漫画家・こうの史代氏が漫画アクション誌上(04年12月2日号〜06年5月2日号)に発表した作品である。
事故で妻に先立たれた初老の主人公・奥田参平が息子夫婦との同居生活の中で妻・おつうが遺してくれた生活レシピのノート『奥田家の記録』を頼りに専業主夫として時には失敗をしながらも孤軍奮闘する日々を送る内容となっている。
昔気質で息子家族に何とか溶け込もうと奮闘するも何故か行動が裏目に出てしまう主人公・奥田参平、息子・詩郎、義父・参平に気を使いをする詩郎の良妻・礼花、昆虫好きの無愛想な一人娘の孫・乃菜、詩郎への引き抜きを図りながら参平と親しくなる人材派遣の女性・仙川イオリなど魅力的な人物が登場する。
個人的には、息子・詩郎の浮気相手と勘違いした仙川イオリを参平が松本行きの特急に乗せてそのまま放置した事で後日、再開した時に彼女から指輪をはめた鉄拳パンチの見舞った挿話(第10話)や洗濯物で詩郎の妻・礼花の下着を干そうとしている時にあまりの日当たりの気持ちよさにそのままうたた寝してしまい詩郎と乃菜から誤解を招いた挿話(第9話)、礼花の留守中、片付けが面倒になってそのまま放置してちらかした状態にしていた所、帰って来てそれを見た礼花が啖呵をきる挿話(第8話)などに大爆笑しました。
同居当初は、どこかぎこちなく息子家族との間に距離があったものの家事を通して参平が息子家族との生活に徐々に馴染んでいく様子が微笑ましく、こうの史代氏の魅せる独特の画風と世界観が物語りと相俟って読後感も心地よかった。
・普通の人達の普通の日常
どこにでもいる普通の人達の、何事もないありきたりな日常生活。そんな当たり前のことが実はすごく幸せなこと、そう思える作品。こうの漫画でお馴染み(?)の広島弁のセリフも登場。こうのさん、故郷を愛してらっしゃいますねえ。
・とても魅力的な主人公
こんなに魅力的な作品は5年に一度出会えるか出会えないかってくらいなんじゃないでしょうか?
非常に丁寧な作り。
隠居したじーさんが主人公なんだけどこのじーさんがとっても魅力的。
凄くセクシー
ずっと手元に置いておきたくなる作品です。
・日本に今後もどんどん増えるであろう風景をマンガで描く
初老の奥田参平は妻を事故で亡くしたことをきっかけに息子夫婦のもとで暮らすことになる。参平は妻がひそかに書き溜めていた家事のガイドブックをみつけ、それを頼りに専業主夫の道を選ぶことに。そんな彼と息子夫婦 そして愛想のない小学生の孫娘の日常を描いたマンガです。
『夕凪の街桜の国』を手にして以来、すっかり こうの史代のファンになってしまいました。ですからこの『さんさん録』も特段内容を確かめることもなく迷わず手にしてみました。
物語の進展にともなって参平は、妻の残したガイドブックに従って、衣服のとれたボタンをつけ、肉じゃがやサバの味噌煮を作り、おいしい日本茶を淹れます。そのそれぞれのコツ描写するくだりが非常に細かく、まさにこの『さんさん録』自体が一冊の家事指南書となっていくのです。
もちろん参平は家事に不慣れな夫でしたから、ガイドブック片手に孤軍奮闘するも、見落としや勘違いもおかします。
妻に先立たれて老夫が長い老後を送る、そんな構図は日本のあちらこちらでこれからどんどん増えていくことでしょう。そしてこのマンガに描かれた、残された夫たちのなにげないコミカルな失敗談もまた、どんどん増えていくのだと思います。
多くの読者にとって身近なテーマでありながら、なかなかマンガでとりあげられそうもない風景を、こんな風に見事に紡ぎあげてみせるこうの史代の筆遣いに感服しました。