・すぐそこにある「死」
家族が生死の境をさまよっていた頃に、
何かの救いになれば、と思い徳永進さんと谷川俊太郎さんの
「詩と死の往復書簡」を読み、徳永先生がまるで隣近所の人のことを話すように、
当たり前のように死を語るのを本で見て、
この本も手に取ってみました。
正直、この本を読んだからといって自分や自分の周りの人の
死が怖くなくなるわけではありません(私の場合)。
でも、当たり前だけど死は誰にでも区別なくやってきて、
それが生後すぐの人もいれば、20代の人も、30代の人も、50代も80代もいる。
男性もいれば、女性もいる。
誰にも公平にやってきて、でもいつやってくるかは誰にも分からない。
そんな「死」に対して「夢二」と「野の花診療所」の先生が
会話していくのが主なストーリーです。
ちょっとしたところ、夢物語を読んでいるような、
一種のファンタジーのような感じも抱きますが、
最後、夢二の家に話が及び、どこまで現実でどこまでが
作り話なのかは分かりませんが、よく出来て考えさせられる話だと
思いました。
いろいろな生があり、いろいろな死がある。
読みながら、何度も泣きました。
何度も泣いて、そしてたくさんの人に薦めたくなりました。
人はただ生きているだけで尊い。
だから、それと同じように人の死も尊い存在でなければいけない。
そんなことを考えさせられました。
ちょっとファンタジーのような、ふわりとした感覚のお話のように思えましたが、
死をひとつの話としてちゃんと成立させるためには、
ちょうどいい塩梅のファンタジー加減かな、と思いました。
オススメです。
高校生くらいから、是非是非読んでください。
・もし神がいたとしたら
ホスピスの院長が中学二年生の夢二と死に対して現場を通して向き合う物語。
本にも書いてあったけど、天寿ガンっていうやつだ。
やっぱり死ぬのは怖い。それを克服する方法はわからない。
でも、もし神様がいたとするなら、人をボケさせてしまうということだ。
ボケちゃえば自分は誰かもわからない。
父方の祖父がガンで入院していた。
肺炎を併発して、意識を失ったときに、脳軟化症になってボケた。
父親は「ボケて何もわからなくして死なせてくれる。神様がいるとしたらありがたいよな」
って、同じようなことを言ってたのを思い出した。
・メメント・モリ
本書はホスピスを経営している「ぼく」が夢二という少年に、「死とは何か」、
「死は怖いのか」といった事をホスピスでの出来事を交えながら伝えていく
という構成になっています。
登場する夢二少年は中学二年生で、本書も中学生に向けられた内容の本ですが、
大人が読んでも死・命・病気について考えさせられることが多くあると思います。
今までいかに死を遠い所のモノと思っていたか、死について考えてこなかったか、
死が多くの現代人から隔絶しているかを思いしりました。
命の現場で働く著者の書いた本書は淡々としていて、とてもシンプルなイメージを
受けますが、そのメッセージは真っ直ぐに読者の心に入ってくると思います。
・命とは、湧くこと 死とは、湧かないこと
まず文体が独特だと感じました。
うまくは言えないのですが、くっきりというよりはぼんやりとした印象を受けました。
あくまで個人的にですが‥。
100%オレンジさんの絵も関係しているのかもしれません。
さて、ホスピスでの病死をメインに話は進んでいきます。
いろいろなケースが紹介してあります。
中学生だと、どうなんでしょう、リアルに感じるのかなぁ。
驚くのか読み飛ばすのか、どうにも想像ができません。
この本の中で一番心に残ったのは「湧く」という言葉でした。
命とは湧くってことで、死ぬのは湧かないってこと、との言葉が本文にあります。
そして、湧くことこそが本物で長く続くものだ、ともあります。
これには、なるほどなぁ、と思いました。
生きているということのはじめはそもそもが、意思によるものではなく湧いたものですよね。
生まれたい!と念じて生まれてきたわけでもないし、意思は発生してから芽生えるものですし。
自分の生も、自分の中に湧いてくる思いも、自分で選んだものではなく、何かしらないけど突然湧いたものなのではないでしょうか。
そしてある時はそれが自分で選んだ意思よりも長続きするのです。
そういうことをいろいろと考えることができました。
湧いていたものが湧かなくなるのはこわいことでしょうか?
湧かないことも自分の意思では選べませんよね。
命はとつぜん発生して、とつぜん消えます。
花はただ咲いています、人間はどうでしょう?
死ぬのは、こわい?
・「死」への想像力を優しく刺激してくれる
ホスピスケアのある「野の花診療所」の所長である著者が、この診療所を舞台に、一人の中二の少年を相手に、「死ぬとは」をどこか独白のような語りかけで紹介し、考えさせていきます。救急車で運ばれる人、病院での死の瞬間、死を待ちながら暮らす人たち。診療所をとりまく世界を通して少年に死を理解させているつもりだったのが、実は、と最後にある一寸意外な展開がお話としても面白くしています。診療所での事実と、作者の創作の部分が入り混じっているのでしょう。優しい語り口は作者のほかの作品にも共通するあたたかさで、暗くなりそうな題材をこの語り口と100%ORANGEの挿画が救ってくれています。
「死にはどんな形容詞が似合うとおもう?」と少年に問いかけるところがあります。「暗い」「遠い」「ひどい」「さびしい」・・・。こんな考えさせ方もあったのですね。表題の中の「こわい」も、つけたくなる形容詞の一つでしょう。「苦しい」を死から離そうと努力している、というのはお医者さんのちょっと宣伝文句みたいにも聞こえますけれど。「明るい」「やさしい」という形容詞がつくような「死」とはどんなものだろうかとか、自分にとって望ましい「死」につける形容詞は、などと考えてみたくなりました。
「死」というものを身近に体験する機会は本当に減っています。コンピュータのゲームの中で死んでも、やり直しがききます。精巧な玩具もできている。カブトムシが死んだら「電池を買ってきて」と言ったとかいう笑い話のような話を聞いたこともあります。もう少し現実の「死」に、こんな優しい形で触れてみることからはじめても悪くはないと思います。突然遭遇してパニックにならないためにも、この本は現実の「死」への想像力を優しく刺激してくれます。
「よりみち!パンセ」シリーズの一冊で、主人公も中二ですから、そのぐらいの年代を対象に考えてかかれているのでしょう。でも、大人でも、これを読むと身近な人や自分自身のこととして、読み取るものが何かあると思います。「死」ということについて、何かの思いが湧いてくる。著者が始めのほうに書いていますが、「湧くってことが、一番大切なんだ」と思います。