・アメリカの規制や勝手な編集をくぐり抜けながらも確実に向こうのオタク達に影響を与えた日本のアニメや特撮達。おもしろいんだけど値段が高い。
ウルトラマン、ウルトラセブン、宇宙戦艦ヤマト、ガンダム、ガッチャマンが、アメリカで残酷なまでにアフレコや再編集でオリジナリティを損なわれながらも、海の向こうでもオタク文化を形成していった様子が、作者の体験記を元に語られるのが、ものすごくおかしい。
ウルトラマンのレッドキングが、別の怪獣の翼をもぎとるシーンとか、ウルトラセブンのアイスラッガーが、怪獣を首チョンパするシーンが子供向けではないからといって全面カットされるほど暴力には敏感な国がなんであんなに殺人事件が多いのだろうか?
ただ、おもしろいのは、前半だけで、後半になってきて、アメリカのオタクの紹介とかになってくるとどうでもよいので流し読みしてしまった。
・紆余曲折の米国オタク文化輸入史
少年時代から日本製マンガやアニメのファンだった著者が自身の成長と重ね合わせて語る、米国のオタク文化輸入史。「日本文化は米国でも大人気」的なヲタ・ナショナリズムに媚びた内容ではなく、観客のほとんどが米国在住の日本人という有名歌手「米国公演」の実情、最近のゴジラシリーズへの辛口コメントなど、かなり硬派な内容も含まれている。
30年以上の紆余曲折を経て米国に定着したオタク文化とそれを取り巻く人々。カワイイ系の少女マンガを愛する(自作のイラストも上手い)と同時に枢軸国の一員だった日本を讃えるネオナチ少女「Dちゃん」など、実際に会ったらどう対応すべきなのか悩んでしまう。一方で、それはまた誤解の歴史でもあった。現実と混同された『SHOGUN』の日本像、原作の雰囲気をぶち壊す粗悪な吹き替え、こじつけと勘違いの深読みオリエンタリズム…。
だが、こうした誤解・勘違いを我々日本人が軽々しく見下すのは慎むべきだろう。異文化間の交流に多少の誤解や軋轢はあるのが当然だし、上のような事例を目にするたびに「日本を誤解している」と息巻く人たちが、偉そうなことを言えるほど他国の歴史・文化に理解が深いようにも思えない。むしろ本当に問題なのは、登場人物がスポンサー企業の商品を飲む場面が米国公開で追加されるような「恥知らずなタイアップ」や、とにかく「売れること」を狙って作品をいじり回しては結局台無しにしてしまう商業主義ではないだろうか。そしてそれは、「良い作品」より「売れる作品」がまず求められ、有形無形の規制・圧力やスポンサーの意向が制作の現場を縛る日本自身にとっても、決して他人事ではない。
著者の「自分たち自身」を冷静に相対化する視点(おそらく今のオタク文化に一番欠けている部分)が深い。一見軽めのテーマや文体とは裏腹に、いろいろ深く考えさせられる1冊だった。
・正確です。
著者と同じ1972年生まれだが、彼の地ではこんな感じの人生が送られていたのか、という点が興味深かった。
著者と同じく、サクラメント市に個人的な地縁がある。まあ、そりゃ退屈だったろうし、あんなコミユニティの中では著者がマイノリティだったであろうことは、想像に難くない。
著者は、そのような環境で育ちつつ、本書の様な日本人にとっても違和感のない「オタク本」を刊行するに至ったのであって、それ自体は大成果だと思う。ただし、見逃してはいけないのは、翻訳者だ。著者は、翻訳者から「先輩」的な接し方をされたと述べているが、それこそが本書の成功の鍵だった様に思う。この辺のトピックって、どうやって「共通の概念」を定義づけるかにかかってたりするからねえ。。。。
いずれにせよ、続刊があれば、買っても良いかな、というくらいには、興味深い。
・優れた文化論
一見オタクのウンチク話に見えながら、この本が優れた文化評論になっているのはオタクの本質を見事に言い当てているからであろう。これには感心した。著者は日本のオタク文化がなぜ世界に受け入れられたかについてこう述べている。
「世界のオタクたちが日本のオタク文化とファースト・コンタクトするきっかけはそれぞれ違うけど、根っこの部分には共通するものがあると思う。つまり、彼らはみんな生まれてからずっと自分をとりまく環境、支配的な文化に
対して不満があって、そこからの脱出を日本製ファンタジーに求めたんだ」
Jocks(ジョックス。「体育会系」という意味で、運動選手が股間つけるサポーターの意味)が幅をきかす学校に耐えられず高校を中退した著者にとって、日本のマンガ・アニメは「新たなる希望」であったのだ。
・広い視野が良い
読んで面白いと感じたとすれば、この本が特別面白いのではない。
今がよほど酷いものばかりがあふれている、というのが正しいだろう。
外人のオタクの持つ元気が、閉じこもりきっている日本のオタクを救済してくれるのでは、とすら感じる。
単純にオタク知識を集めたい者としても、買って後悔することは絶対にない本である。
あえて言うなら、「日本は男尊女卑の国」といったレベルに留まっているのは残念。