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・日本社会の本当の姿が分かる一冊
21世紀に入り、育児休業、保育、あるいは次世代育成支援法などの制度が整ってきたのに、日本社会で子育てが楽にならないのはなぜなのか?「ワーク・ライフ・バランス」先進国の米国の制度は、日本の現状を解決する特効薬なのか?保育所の民営化っていいことなのか?
筆者は、こんな疑問に対し、100人近くの働く母親達へのインタビューや米国での取材をもとに、正面から取り組んだ。現実の中で「言いたいことが多すぎてひと言では言えない」という母親たち一人一人の生の声が、同じ目線で取り上げられている。そこでは、子供を育てながら「働きたい」「働かなければ生活していけない」という女性の意欲をまだまだ十分に活かしきれずにいる日本社会が浮き彫りにすることに成功している。
国の制度が不十分なのか、企業の体質の問題なのか、それとも、育児を女性に任せきりにする男性の意識が問題なのか。母親たちが抱える現実は、そうした「スローガン」がすくい取ることができないばかりか、小泉改革の下の労働環境の激変の中で極めて困難なものとなっていることも、描き出した。
ただこの本は、取り上げた問題についての具体的処方せんは示していない。だが、筆者の理想は高い。「自分が培ってきた能力を発揮し、生活とよべるだけの経済的基盤をもち、大切にしたい人との関係をはぐぐみ、暮らしの喜びを実感する。それを性別に関係なく、いま働いている人に、また再就職をめざす人すべてに保障する。『個人の責任』のみに返すことなく、職場や家庭、地域でその思いを共有する。そんな社会を完全に実現した国は世界にはない。それがいくら遠く非現実的な目標であろうと、この世界的な課題に私たちも挑んでいる。そしてもし、世界に先駆けて達成しえたなら―。いま、悩み、苦しんだとしても、それは十分、価値のある挑戦ではないか」。
日本社会の本当の姿を知るという意味で、読むべき価値のある一冊だ。
・働くことって
「子どもをもって」いるかどうかにかかわらず、働くこと、生活することの根源的な意味を問い掛ける内容だと思う。
本書にも出てくる「ダイバーシティ」という概念。日本を代表するような大企業での取り組みを新聞で何度かみたことがあるけれど、その同じ企業が「サービス残業=未払い残業」で労働局の是正指導を受けていた。ファミリー・フレンドリー企業とか、ワーク・ライフ・バランスとか、新しい言葉を聞いては期待するけれど、それで実際に何かが前進しているのかどうかは「?」。
そんな混沌とした現状が、ありのままに提示されていて、子どもがいない私でも、「ああ、あのやりきれなさ」「そのしんどさ」「こんないらだち」みたいな部分で共感できる。アメリカの実情が、「米国の制度はこんなに進んでて」調ではなく、参考にできる点もあれば日本とは社会構造や考え方の基本が違う点、負の側面も合わせて描きこまれているのも貴重。
知識を得るためというより、自らが考えるための一冊として、オススメ。
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