・「日の丸検索エンジン」
本書は、2004年8月から書かれてきた池田氏のブログをまとめたものです。
IT関係の仕事に携わっているものとして、産業政策の失敗について書かれている記事は興味深かったです。産業政策として「日の丸検索エンジン」を挙げており、国が特定の目標(検索エンジンを作ること)を設定して大規模な投資を行うことはリスクを極大化することを述べています。その理由として、過去に成功した半導体製造(製造業)に対する国の投資では、需要の存在は確実であり、供給側の規模だけが問題だったのに対して、情報産業では供給側の設備の規模よりも需要や技術革新の不確実性が問題となることをあげています。したがって、あらかじめ特定の目標を設定して大規模な投資を行うよりも、多くの「実験」に分散投資し、事後的に見直して失敗したプロジェクトから撤退するオプション(選択肢)を広げることが重要になることを述べています。
このような、分析や、どうあるべきかという提言は、現在の国のプロジェクトを客観的に見る上で役に立ちます。
一方で、「テルミドール」などのいくつかの固有名詞が何を意味するのかわからないこともあり、さらっと読めない箇所もありました。ネットで調べればもちろん、それが意味することはわかるのですが。
・会社の同僚にすすめたい。
硬派なコラム集である。
難しい言葉も多い。
自分はITについては弱いことを自負しているので、
あまり気にせず読み飛ばしながら進むのだが、
悲しいかな経済についても理解できない(難しくて)言葉が多い。
ただ、おもしろい。
なるほど、ふむふむ、その通り!の連続だ。
著者の紹介する様々なエピソードを読み進むと
自分の日々の仕事が、非効率的で時代を見るピントのボケたものであることがわかる。
実に刺激的な一冊だ。
ただ、タイトルは少しわかりにくい。
・ 資本主義のパラダイムシフトなどを大胆に語るブログ集成
刺激的な書題の付いた池田信夫氏のこの著作は、04年8月から書きためた氏のブログの集成である。従って、コンテンツは様々であるのだけれど、今日におけるグローバル化・デジタル化した資本主義経済との関連を一言で表せば、「現代のいかなる産業もムーアの法則による創造的破壊をまぬがれることはできない」(P.98)ということであろうか。
確かに、日進月歩する情報通信産業の分野では、インテグラル型の「持続的技術」に対するモジュール型の「破壊的技術」の優位性が明らかとなりつつあるようだ。「技術が経済制度を決める」という前提を措くならば、垂直統合型(製造業型)アーキテクチャは水平分業型のそれに取って代わられる、というパラダイムシフトの像が否応なく浮かび上がってくる。
とはいうものの、私には、たとえば「Nスペ(NHKスペシャル−引用者)は70分バージョン(試写版)が一番おもしろい」(P.54)とか、外務省と同じようにNHKの内部にも存在するらしい「チャイナスクール」(P.58)の暗躍とか、そういった著者のNHK職員時代の内幕(暴露)話や、日本におけるメディアバイアスの問題などについても大いに興味を引いた。
無論、著者の専門である情報技術やメディアの未来などに関して、それなりに参考にはなるのだが、論調として独断的(強引?)な箇所もみられる。やはり、本書の後に刊行された『過剰と破壊の経済学』(アスキー新書,07年12月)を併読することで、指数関数的な技術進歩の代名詞といえる、先述した「ムーアの法則」の“破壊力”などが少しは理解出来よう。
最後に、本書との直接性はないのだが、大江健三郎「沖縄ノート」裁判を巡る文芸評論家・山崎行太郎氏とのネット上の“論争”は、最終的に決着がついたのであろうか…。一介のネットイナゴ(笑)としては気になるところだ。
・メディアに踊らされない眼
目から鱗な内容が盛りだくさんです。
普段メディアに接するとき、視野が狭くならないようにと気をつけていても業界の専門用語やWebの記事に踊らされてしまうのが常ですが著者は違います。非常に高い視野から物事を見ておられポイントを見事にズバッと述べられています。
わたしもIT業界の人間なのでWeb2.0などについてなんとなく分かった気になっており、「こうこうこういうもの」と勝手に解釈していたのですが本質を捉えた著者の記事にドキッとさせられました。
非常に面白い視野からの記事が多く、時間をかけてゆっくりじっくり読みたいと思える非常に希な良書だと感じました。IT関連の方には特にお薦めです。とても面白く読めました。
・思い切ったことを書く
思いきったことを書く人が減っていると思う。ブログも書籍も、ひとをほめる言説があふれており、批評性が見あたらない。
そういうなかで、池田氏のブログをまとめて書籍にしてくれたのはありがたい。