・エピローグから読め。
この本の一番面白いのエピローグです。
エピローグから本題に入った方が、すんなり読めるはず。
でも結構難しい説明もあり、基本的な事を抑えておく必要はある。
個人的には対談形式の本は好きではない。
理由は、文章がダラダラとなってしまうからである。
やはり、話しと文章は違う。もっとまとめて欲しかった。
・頭の整理にはなるが明らかな誤りも見受けられる
マスコミ的大衆受けを狙う分析ではなく経済学的観点から論じているので頭の整理になる。
ただし、例えば次のような初歩的誤りも見られ残念。
1「CDSプレミアムを全額収入であるかのように計上」(池尾)なんて出鱈目。デリバティブは当然に時価会計処理であり、プレミアムがそのまま収入とはならず、ヘッジファンドやAIGはその評価損で苦しんだのだ。
2「まだ自分のものになっていない会社を担保にして起債するので、買収に失敗したらジャンクボンドは紙切れになる」(池田)って、本質はLBOはレバレッジが高いことであるのであって、まだ自分のものになっていないことなんて関係ない。そもそも起債やローンは一般に買収が完了することが成立の条件(condition precedent)になっていることさえ知らないのだろうか。
・カタカナに負けない
日経の書評欄で目にして購入しました。
対談形式ということですが、読者へ語りかけるような文章でとっつきやすいです。
ただし、金融用語などはカタカナでの標記が多く、ネットで調べながら読むことをお薦めします。決して難解な表現をしているわけではないのでその点はご安心を。
なぜアメリカの投資銀行破綻が世界に不況を引き起こしてしまったのかをアカデミックに理解したい方にはお勧めです。
・対談形式だから助かる
経済学というのはなぜかマクロとミクロに分かれていて、学ぶ方は当たり前のようにこれら二つの経済学をそれぞれ別々に学ぶわけだが、それぞれがどのような関係にあるのかあまり気にしない。今回の金融危機はこれら二つが密接な関係にある中で起きていることを本書は学ばせてくれる。
著者の一人池尾氏は、今回の危機はミクロ経済学に出てくる「エージェンシー問題」と「モラルハザード」によって惹起されたと喝破する。一方処方箋については現在政府が取り組んでいる財政政策について説得力のある批判をおこなっているがこれは最新のマクロ経済学理論に基づいている。両方の分野に関して的確な視点を持つ意義と必要性を平易な言葉で説いてくれており、読了に充実感がある。
・このままでは、この国はゆっくり沈んでいくような気がしてならない。
世界同時不況と呼ばれる経済状況になってから、いくつもの書籍が刊行されてきた。
それらの書物に多く見られるのが、市場原理主義への批判や反省である。
これが、小泉構造改革への批判と重ね合わされ、それが今の何でもありの景気対策へとつながっている。
本書は、このような市場原理主義批判や、デリバティブなど金融工学批判への反論である。
すなわち、資本主義はもともと金儲けのための制度ではあるが、そこには一定のルールがある。そもそも市場原理主義などという主義は存在しない。今の日本の遅れた市場を見て批判するのは当たらない。むしろ資本市場は、より透明度の高い質の市場へと導かなければいけない。
また、金融工学への批判も、リスクを減らすための取引という側面を見落とした誤った考えである。むしろ今回の危機は、市場を通さない相対取引で素人には見えない複雑な金融商品をリスクヘッジなしで売りまくったことに原因があるという。
非常に冷静な分析と考察を行っている印象である。
日本は、今回の経済危機による影響を受けた国々の中ではもっとも落ち込みが激しくなっているが、これは1998年から続く長い停滞からの構造改革ができておらず、むしろ数々の景気対策により温存された非効率な産業がそのまま残っている一方で、円安を背景に輸出に支えられてきた自動車や電機関係の産業が大きな打撃を被っている状態であると断言している。
我が国に本来必要なのは、短期的な景気対策ではなく、短期的には痛みを伴ったとしても長期的なビジョンを持った戦略であると結んでいる。
もっともな議論ではあるものの、最近の動きは旧来型のばらまきそのものである。
このままでは、この国はゆっくり沈んでいくような気がしてならない。