Amazonカスタマーのレビュー
・評価されていい本書
著者の主張の基軸は以下の点にあると思います。
1.日本経済不況の元凶は、バブル期に高騰した資産価値低下に起因
2.結果生じた需要不足が不況の原因であり、いくら供給サイドの効率化(=構造改革)を進めても意味がない
3.よって財政出動により、選別された公共事業投資を続ける一方、新産業育成に政府の役割がある
4.金融政策によるインフレターゲット論は現実的ではないし、それを支える経済理論にも確かなものはない
5.不良債権処理は不況の結果であって、失業という最も非効率的な部門を拡大させるだけ
2.5.については野口旭氏「構造改革論の誤解」などにも詳しく、竹森俊平氏「経済論戦は甦る」でも、その妥当性は歴史的にも勝負ありの議論とされています。ただ、野口氏らと異なるのは3.4.であり、金融政策ではなく財政出動に政策提言を求めたところに主張の違いがあります。
さて、小泉構造改革が一定の成果を得た、と評価される今、改めて本書を読み返し(2003年の出版)、面白いのは、結果として一見現政権は著者と全く反対の政策を行って景気回復を成し遂げたように見えること。供給側の効率化を進め、財政出動は抑えました。しかし、著者の主張が誤っていた、するのも早計という気がします。現実は複雑で、その評価には、例えば主張に沿いどの程度の財政出動がどのタイミングで行われたか、また金融政策の中身が問われてどの程度の回復が遂げられたか、といった具体的な吟味が必要だと思います。恐らく言っていることはそれなりにみんな正しい、というのが結論だと思います。
現実や政策を見る、分析する視点が養われることが経済書を読む成果、その観点から論者との議論を通して論点を浮き彫りにしていこうとする本書は評価されていいと思います。
・「小野理論」と「政策提言」の間の乖離が甚だしい
小野自身の不況理論と、そこから導かれるはずの彼自身の政策提言の間があまりにもズレすぎている。彼の不況理論とは、不況の原因は人々が貨幣に対して守銭奴的愛を抱くようになるために起きるのだ、という「流動性選好理論」である。しかし、そうした主張からは「赤字国債は次世代への負担にならない」とか彼自身の提言である「新産業の育成」などというものは導かれないはずだ。もし彼がそれをロジカルなものだと考えているとしたら、彼自身が自分の不況理論の重要性に全く気づいていない、と言わざるを得ない。
・小野のよくないところが前面に出ている本。
経済学者小野善康の対談集だが、正直言って、こんな人と対談してどうするんだ、という相手が多い。リチャード・クー?トンデモ通俗エコノミスト筆頭みたいな人でしょ。宮台信司? 官直人? 時事的な話題造り以上の価値があるか?そして最後の、編集部によるインタビューは、小野自身のダメさ加減を浮き彫りにしていて悲しい。小野はインフレターゲティング論に対して曰く「ただえさえ、土地や株の資産価値がなくなってんのに、さらに貨幣の資産価値まで下げるなんて、普通に考えてもおかしいですよね」。でもあなたの理論の主張する流動性選考理論から導かれるのはまさにそういうことだったはずでしょう。小野の提起する不況対策は、新規産業育成だけど、時間をまったく考慮しないのだ。か㡊??は日本経済をある家の冷蔵庫に例える。中身が減ってきて、残った野菜も腐り始めている。さてどうする?「私なら、庭へ出ていって種を撒いて大根を作ろう、野菜を作ろうとします。あるいは外へ行って新たに仕事を探してこようと努力します」だそうな……野菜がとれるまで何ヶ月かかるんだよ。仕事が見つかるまでどれだけかかるんだよ。冷蔵庫の中身がなくなっていきなり農家になる人なんかどこにもいないぞ。こういう異様な非現実話が説得力を持つと思うこと自体、かれの思考が現実とかなり遊離していることを示している。というわけで、焦点のぼけた、論点のあやしい本。構造改革批判や不良債権処理批判はいいんだけれど、肝心なところははずしている。
・新規産業ってどうやったら育成できるのでしょうか?
効率の悪い分野を思い切って捨てようという「構造改革派」に対して、真っ向勝負を挑む小野教授の対談集。最も効率の悪いのは失業者や遊休設備で、それを有効に活用することこそが重要だと説く。吉田和男教授との税金は最終的に負担なのか、国債は将来世代への負担か、との議論はかなり考えさせられる議題であろう。
ただ、新規産業の育成によって雇用を増やそうという信念は理解できるが、はたしてどうやったらそれが可能なのだろうか?しかも、政府が将来的に有望な産業など育成する能力はあるのだろうか?もう少し、その辺の処方箋を提示して頂きたい。
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