Amazonカスタマーのレビュー
・そしてオヤジは打ちのめされる
コミックの良い読者でもなく、まして少女マンガ(?なんてカテゴリーは今成立してるのか分からないが)の良い読者でもなく、さらに輪をかけて魚喃キリコの良い読者でもないのだが、これは、ちょっと、捨て置けない一冊。
イラストレーター的な感覚と漫画家のセンスは似ているようで相容れないものだと思うのだが、ページをめくると奇跡のような<マンガ>と<イラスト>の原初的な邂逅とでも言わざるを得ないカットがあって、おぢさんはアラレもなく悶絶してしまう。
「短編集」などというふざけたタイトルは、これしかタイトルがつかないような寄せ集めの一冊だと言うことの証明である。であるのに、ときどき、これってなに? という驚きに遭遇してしまう。それから、自分が過ごしたぶざまな思春期の、あの一瞬がもう取り戻せないことに今更ながら気づいて、夜中に走り出したくなってしまう。本当に走ったら不審者であるから、もちろん走らないのであるが、布団の中で走ったりしてしまう。そのこと自体に、実にわが悲しい人生を突きつけられたりして、オレはどうなってしまうのか、不安になったりする。オヤジになって、こういう作品に出会うのは、あまり健康に良くないのではないかとも思う。
いままで、この手のコミックをなめていました。本当にすみませんでした。
・どこかで だれかが
自分が1人で夜をやりすごすとき、
どこかでだれかが誕生日を祝ってもらってるような 風邪を引いているような
破滅的な恋愛をしているような 今本当に短編集のような事が起きてるのかな?
と身近に感じるくらいの日常が集められてます。
構成というかこの短編の順番もバッチリで、
「幸せに眠る」でしめくくられているのがいいなと思いました。
・秀逸な短編集
夜眠る前などに何気なく手にとって読んでも楽しめて
しかも安心して眠りにつけるような一冊です。
様々な感情がちりばめられていますが、一貫した
安定感があります。
小洒落た絵が好きな人やモノローグ好きな人には
特にオススメの一冊。
・日常の中に生きている、ということ
個人的に魚喃キリコの漫画の好きな部分というのは
ナチュラルな絵と共に進む物語が
淡々と程よいリアルさと軽い非日常さを持ちあわせ、
そっと描かれている日常の風景が存在しているところだ。
恋や愛がいかに脆く儚く、美しくあるいはきたなく、
そして深く、どうやっても測りしれないものなのかということを
この『短編集』は生ぬるい温度をもってあたしに伝えてくれた。
魚喃キリコの漫画を読んでいると、
不思議と恋がしたくなったり、反対にしたくなくなったりするのだ。
そしてこみあげてくる小さな笑いや幸福と言う名前の感情も、
胸の奥のほうがジワジワとえぐれていくような気持ちも生まれる。
読むたびにあたしの奥底に沈んでいる重たい塊を
ゆっくりとやわらかくしてくれる作品たちだなぁ、と思った。
・痛いほど美しい画
魚喃キリコの短編集。彼女の漫画に登場する子達は決して大多数の少女漫画に出てくるような女の子達ではない。現実を背負って生きている。ここで生きていくには沢山の痛みが必要であることを、彼女はまるで写真を撮るように、映画のひとコマを写すようにきれいに描き出してくれる。