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 いい具合に力の抜けた、おバカな青春ラブコメディです。

 ハイテンションなギャグをテンポよく繰り出しつつ、沙村広明先生お得意の脅威の画力で、締めるところはキチンと締める。この緩急がとても気持ちいいです。

 デビュー作『無限の住人』とはかなり趣きを異にしますが、こういうタイプのゆるーい作風のほうが、沙村広明先生には意外に合っているような気がしました。
「小学生は人を好きになっちゃいけないの?」

 帯に書いてあるコピーがーっ! さらに帯を外すと……、絵が微妙に違うしーッ! パンツはちゃんとはこう!

 とか思ってたら、新装版では表紙の絵が変わってしまったので、この感動(なのか?)をお伝えできないのが悔やまれます。などと舞い上がっていますが、中身はいたって真っ当です。

 サナギだった少女は、自分が蝶であることを知ってしまう。しかし早すぎた羽化は、自らの身体も周りの者も傷つけてしまった。だけど、それでも彼女は、サナギから蝶へと成長する。そして蝶は傷ついた羽をはためかせ、夕焼けの向こうへと飛んでいった。

 みたいなお話です。評判のいい泣きギャルゲーといったような趣きでしょうか。登場人物の不安定で微妙な表情を、切り絵を思わせる太くソリッドな安定した描線で、うまいこと描いてます。

 でも、身を切るような痛みのある物語ではあったけど、似たタイプの物語として連想した比古地朔弥のマンガ『神様ゆるして』に感じたような重みはあまり感じられませんでした。なぜだろう。そのソリッドな描線が、あまり肉感的じゃないからかも。まあ、そういったライトなテイストが今風なのかも。
 ありえたかもしれない21世紀のギャルゲー。

 ゲームに使っているテレビをそのままテレビ電話の端末に見立てて女の子との会話を楽しむリアルタイム会話シミュレーションといった趣きのゲームです。なんかテレクラっぽいです。

 相手がしゃべると、そこからいくつかのキーワードが取り出され、その取り出されたキーワードを適当なタイミングで相手に返すと、返したキーワードをネタにしてまた相手がしゃべり続けます。

 みたいなことを繰り返して会話をすすめていきます。かなりの受身にはなりますが、会話という行為をうまくデフォルメしていて興味深いです。

 でも20世紀のゲームマシンで21世紀のゲームをプレイするにはやや無理があったようで、やたらとレスポンスが遅くて何度か投げ出しそうになりました。

 ところが、あるイベントが発生したときに、自分の中の何かがはじけました。「萌える」ってこういうことなのか!? すごいぞ、未来のギャルゲー!
 このマンガの魅力は、なんといっても画です。ちょううまい。特にその描線がたまりません。

 ゲイ雑誌に連載されていただけあって、毛むくじゃらのむさ苦しい男どもがくんずほぐれつするような濃厚なシチュエーションが頻繁に登場するにも関わらず、たぶんその画のおかげだと思うんですけど、やたらとスマートな印象です。ミラクル!

 それから、登場する女の子が大変にかわいらしいです。

 このお話に登場する女の子は結構ひどい目にあわされています。いつもの自分であれば、こういうのを見ると変なフェミニズムみたいなのがむくむくと首をもたげてきて、「だから男は!」みたいなことを思うんですけど、そういうのが全然ありませんでした。なんだろう、これは。性的欲望の対象として女性を求めない、ゲイ雑誌ゆえの特殊性なのかな。ミラクル!

 あと、エロいです。男にはあまり欲情しない派なのでよくわかんないのですが、そのスジの人なら、ヌケるんじゃないかとも思いました。
 ちょうカッコいい。とにかくカッコいい。膨大な数のカッコいい要素がつぎ込まれた、やたらめったらカッコいいマンガです。

 弐瓶勉の最初の長編『BLAME!』は、ほぼすべてカッコいい要素で構成されていて、面白要素が希薄というか、わかりにくいところに配置してありましたが、『BIOMEGA』はなかなかにわかりやすいです。しかも面白いです。そんでもってカッコいいです。要するにオモシロカッコいいので、広井王子とかがアニメ化しそうですね。ウソです。しません。

 こういう感じの極端に個性が強い作家さんは、ほうっておくといつの間にか遥か彼方へと飛んで行って何だかさっぱりわかんなくなっちゃうので(押井守とか)、凡人の自分としては適度な足かせをしてもらったほうが楽しみやすいと思いました。そんな作家を載っけるウルトラジャンプは、ちょうえらい。もっとがんばれ。ちょうがんばれ。
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