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書籍: 壬生義士伝 下 (文春文庫 あ 39-3) * * i 壬生義士伝 下 (文春文庫 あ 39-3)
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『幻夜』を読んだついでに再読してみようと思い、8年ぶりの再読。というかこれ、出版されてからもう8年も経つのか。。。

さて久々に紐解いた本書は、やはり素晴らしく面白かった。これはほとんど完璧な小説なのではないか。「仮初の太陽が照らす白夜を歩く二人」の姿を、感情を配して徹底的に客観的に描くことで物凄い迫力を生んでいる。このコンセプトを思いついたのも凄いが、そのコンセプトを最大の効果を生む方法で書ききったのが何よりも素晴らしいと感じた。

圧巻なのは結末。8年ぶりに読んだのだけれど、最後に提示される情景はまるでつい先日読んだ作品であるかのようにはっきりと覚えていた。このストーリーの最後にこの一文を書けてしまう東野圭吾は本当に凄い作家だ。日本ミステリ史における最高傑作のひとつとして、長く語り継がれるべき。
東野圭吾の長編小説。
装丁やテーマ(及び構成)が、あの『白夜行』を思わせることから、てっきり続編だと思っていたのだが、どうもそうではないようだ。読み方によっては主人公は『白夜行』の雪穂であるとも読めるし、あるいは同テーマを扱ったパラレルワールドの作品としても読める。東野自身も続編であるか否かの明言を避けているようで、どう読むかは読者に任せるということなのだろう。

物語は『白夜行』同様、他人の魂を食うことで生きていく二人の男女が主人公。『白夜行』と違うのは、前作では徹底的に外側から書かれていた男女が、内側の視点からも描かれていることだろう。男と女が知り合い、やがてともに夜の世界を歩いていくまでの描写を挟むことで、前作にはなかった視点から二人の犯罪史を見ることが出来る。

「他人の魂を食いながら、夜を生きる男と女」というコンセプトは相変わらず素晴らしく、700ページ強の本を一日で読み終えてしまった。ただ『白夜行』に比べ色々と不満もあり、特に結末、女が最終的に何を目指しているのかがはっきりしないことと、男が最後に選んだ選択については疑問の余地が残った。特に前者は作品の根幹に関わる部分なのだから、はっきりさせておくのがマナーだと思うのだけど。
人格転移の恐怖を描いたサスペンス。作者が東野なので、細かいSF理論はファンタジーとして曖昧に処理されており、あくまで人格をのっとられつつある主人公の心理描写を物語の中心に据えているのが興味深かった。またその心理描写が巧いんだな。ページを繰る手が止まらない。

ただ序盤~中盤が素晴らしいのに引き換え終盤がかなりグダグダで、最後に提示された絵について私はあまり説得力を見つけられなかった。その理由としては人格を乗っ取られつつある主人公に、現状を打破するためのクリア条件が与えられていないせいだと思う。この状態を何とかしなければいけないのに、では何をすれば状況を改善することが出来るのか? 主人公、及び作者はその結論を最後まで見つけることが出来なかったのではないか。これも残念ながら私の中では前半傑作かな。

甲子園の試合で、天才投手がただ一球だけ投げた「魔球」の謎を巡るミステリ。物語は序盤から謎が謎を呼び、サスペンスが加速度的に膨らんでゆく。この辺りの巧緻な構成は東野圭吾ならではのもの。

※この先にはネタバレがあります。
※この先にはネタバレがあります。
※この先にはネタバレがあります。


だが解決の仕方がイマイチで、特に捕手が殺された理由が「偶然だった」というのは納得がいかない。そこには明確な殺意があって欲しかった。また、「投手は何故右腕を切り落とさせたのか?」の回答が明示されていなく、センチメンタルな動機が暗示されているが、この謎はロジカルに解決して欲しかった。折角謎の提示からサスペンス醸成が素晴らしい出来なのだから、最後の詰めの部分をしっかりしていれば凄い傑作になったと思うのに。まあ前半傑作。
『二島縁起』に続く海上タクシーシリーズの短編集。七篇の掌編からなる作品集だが、そのどれもが味わい深い余韻を残す全ての作品に人生があり、人間が描かれている、この辺りは多島の真骨頂だろう。

このシリーズを一段と味わい深いものにしているのは、寺田と助手の弓との関係性だと思う。それは恋人同士ではないし、親子ではないし、親友でもパートナーでもない。それらの関係性が入り混じった彼らの微妙な距離感と、彼らを乗せて颯爽と瀬戸内海を走る「ガル三号」の姿は、読むものに忘れがたい余韻を残したことだろう。
だからこそ、巻末の『灘』は感慨深い作品だった。ベタベタな「泣かせ」にしようと思えば出来る作品を、あえてこのような形で描く。これこそが多島ならではのダンディズムであって、私はそこが大好きなのだった。このシリーズに出会えてよかった。
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