|
二度目を読み終えた。
一度目は第一章第二章に速力を感じ圧倒された。
修学旅行中に家族が殺された主人公。深夜タクシーに乗り戻るまでの4時間。待受ける出来事を予感しながらも戻るしかない道。張詰めた神経の上を綱渡りする様に神経が研がれて行く。変り果てた家族を目の前にし落下するような感覚。打って変わって殺人者の上申書が第二章。地方出身者で生真面目な男の半生。殺人に至った心情が切々と語られる。
その対比と描写に魅せられた。
二十歳になった被害者の娘が加害者の娘に近づく第三章から第五章。少々厚みが足りないようなセンチメンタルなような気もした。
何とはなしに二度目を読み始めた。薄いような気がした後半。小説の主体は此処にあるのだと再認識した。センチメンタルでいいのだ。隠れ家のなかでは誰しもそうなのだろうから。薄いと感じた部分も二十歳の未完成さの現れと思えば好感が持てる。キスして別れた二人はまたそれぞれの人生を生きる。出会う前とは確実に違うものを持っている。
冷めたころ三度目を読むつもりだ。
|